画像で見る「りとむの風景」
< 東 京 歌 会 便 り 2018年3月>
2018 年 5 月井 本 昌 樹
東京歌会便り 2018年3月 井本昌樹
南国に桜が開花し、国有地の売却決裁文書改竄に、世論が湧く中行われた三月の東京歌会では、次の歌達に注目した。
・ねもころに窓みがきつつ冬空の切断面に掛かれるをとこ
新木 マコト
・求道的潔癖潔白兄さんを語ろうとして言葉もつれる
北川 美江子・ジャズのごとうるさいゴッホの絵なりしが賛美歌に変はる
〈花咲くアーモンドの木〉
高木 泉一首目は、今月の十首詠に選ばれた「翼と棘」の中の一首。
一連には、先端の文化を象徴する翼と、微細な傷を致命的にしか
ねない棘が、危ういバランスに共存するわが街とわが心理の有り
様が、この上もなく繊細な感覚で写し取られている。冬空を切断
するビル壁に掛り、一心に窓を磨く人の姿は実景であると共に、
現今のアキハバラと自身の象徴でもあろう。
二首目。おなじく今月十首詠に選ばれた「い・ぬ」の一首。華甲を迎えた作者は、同じ戌年で一回り上の、失踪した兄を思
っている。ストーブを囲み餅を焼きつつ、幼い弟妹に冗談を言い
はにかんでいた兄は、求道的なまでに潔癖潔白な人でもあった。
そんな兄が何故失踪したのか、未だに納得のいかぬまま、優し
かった兄を思い続け、思い倦ねているのだ。
三首目。ゴッホ展で「花咲くアーモンドの木」に出会い、これがゴッホ?と、見入っている。見慣れたゴッホの絵との相違
を、聴覚的な印象に変え表現しているところが個性的だ。
【 トップページへ 】 【バックナンバーへ】