画像で見る「りとむの風景」
< 東 京 歌 会 便 り 2018年1月>
2018 年 4 月井 本 昌 樹
東京歌会便り 2018年1月 井本昌樹初参加の原浩さんを始め、三十六人の出席者中に十五名の男性会
員を数えた一月の東京歌会では、すぐれた歌の読みと批評に出会え
る、よろこびを噛み締めることが出来た。
・割り勘でいいんだけれど繋がない手だしリュックのベルトを握る 高橋 千恵
・貧乏で何もしてやれなかったとたらちねはいひき誰にともなく 寺尾 登志子
・朝食を食べに降りれば広島は水の街ですとメールが届く 滝本賢太郎
一首目は、「第十八回りとむ二十首詠第一位」に選ばれた高橋千恵さんの作品。一連は、三十代の今だからこそ表現出来る女性
の心情に主題を据え、軽やかな運びで一首一首歌にしていった、
作品の成り立ちがいいと称賛され、提出歌では、「けれど」
「だし」の接続語が働いて、心理の微妙なゆらぎを伝え、
歌の表現のレベルを一歩上げていると評価された。
二首目。所謂嫁と姑の感情の、微妙に修正された感じが出ている
挽歌の一首で、余分な一切を排して詠われた歌から、してやりたい
こともしてやれなかった、母の思い返しの尊さが伝わってきて、小
さな感動を呼ぶと評された。
三首目。遠く広島大学まで出向いて行った学会発表を了え、研究
者仲間の懇談会も熟した翌朝の、プライベートな自分に戻りほっと
した作者の姿が、さりげなく一連の結びに置かれているとする、あ
ざやかな歌の読みに感動を覚えた。
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