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「第10回オンライン歌会報告記」
令 和 4 年 12 月
高 橋 千 恵
第10回オンライン歌会報告記 高橋千恵
12月18日(日)2022年最後の歌会がオンラインにて行
われた。
この日の参加者は35名(聴講10名)いつもより参加され
る方が少なかったが初めて出席された方もいた。
13時になり歌会が始まる。今回の最初の、Aグループの
評者は今野寿美先生。
この日、関東地方は冷たい風の1日だったがニュースでは
北海道、東北地方の積雪を伝えていたこともあり、「樋口さん、
北海道の雪は?」と心配される今野先生と「起きたら主人が
雪かきをしてくれてました」と北海道にお住まいの樋口智子
さん。こんなふうに全国の方々と自宅にいながらひとつの画面
に集まり、お互いの住まいの状況などを伝え合えることも
オンライン歌会ならではの交流だろう。
・ 鉄橋を鳴らして渡るその長さ 川の、夜の、この世のものの
/樋口智子
まず、今野先生はこれまでの樋口智子さんの第1、第2歌集の
特徴を挙げられ、2冊を経て樋口さんの歌に客観性が加わり、
印象が変わったと評された。そして挙げられた歌の<鉄橋>とは
シンボリックに響くものであり、人生に捉えるものでもあると。
今野先生の評の後、樋口さんから今回の作歌において読点を2つ
使うのはどうでしたか?と質問があり今野先生は「多用はよろし
くないが今回の作品においては間合いをはかる、心理を図る点
では効果的」との事だった。
・ 終戦のあと一日(ひとひ)だけ早ければ大空襲は
なかりしものを/佐藤あさ子
Bグループの評者は三枝昻之先生。秋田出身の佐藤あさ子さん
は昭和20年8月14日の夜10時に秋田市土崎にて空襲に
遭う。佐藤さんの一首に三枝先生が柳原白蓮が8月15日の
4日前に息子の香織を失ったことをお話される。(白蓮の息子、
宮崎香織 は学徒出陣により鹿児島の基地に赴任中、爆撃を
受けて亡くなる。その香織を想った白蓮の一首は<たった
四日生きて居たらば死なざりし命と思う四日が切なき>
「もし終戦が8月6日であれば白蓮も佐藤さんも嘆きは無
かった」とお話され実感のこもる振り返りが読者に伝わると
評された。
・ 早朝の蜩がやみ山の香をはこぶ風には
くらやみがある/坂内謙太郎
Cグループの評者は寺尾登志子さん。作品の上の句、蜩が
朝の訪れを告げながら鳴き止み、それから本格的な朝がく
るデリケートな描写と評される。しかし<早朝>は爽やかな
イメージがあるが<くらやみ>は読者がどういうことだろうと
戸惑うのでは?という指摘があり一首の言葉の組み立てを
推敲し<蜩がやみ早朝の山の香を…>というプランが提示
された。というのは提出歌の一首前の<詩人になりたいと
あなたに伝えた春の日を思い出すひとりで>という一首を
寺尾さんは評価されていたので今回の坂内さんの連作を
より良き作品にするためのアドバイスだったのだろう。
参加された方と評者の先生とのやり取りはおそらく3分
ほどかもしれないが限られた短い時間の中で評者の先生方は
提出歌以外の作品にも触れ、連作の総合的な評をされることも
ある。なので参加者、聴講者も<作品の読み>というものを学
べる機会でもあるのでこれからもぜひ、みなさまの参加を
お待ちしております。
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