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「岩国市民短歌大会」 


令 和 4 年 11 月

              講師 寺尾 登志子先生 他
 

     懸 垂 幕 を 背 に           寺尾登志子

     岩国の歌人、藤本寛さんとは、りとむHPの関わりを通して

   五年越しの付き合いとなる。その藤本さんから、岩国市民短

   歌大会の講師を依頼されたのは昨年の夏だったか、秋だった

   のか。いずれにしても、一年以上先の開催を見通してのことで、

   大会事務局長の熱い意欲と責務がこちらにも伝わってきた。

      この大会は二年に一度開催され、前回2020年には講師に

   松平盟子氏が予定されていたそうだが、コロナ禍のため中止

   となった。そうか松平盟子の役割を担うのか、と緊張するが、

   引き受けた以上は自分なりに務めを全うする他はない。

      年明けて春、大会に向けて岩国では短歌協会の本格的な

   協議が始まり、度重なる会議の流れはその都度、藤本さんか

   ら知らされ、モチベーションを維持しながら、ペースよく準

   備を進めることができた。

     90分の講演では葛原妙子を取り上げることにする。個性的

   な歌人なので、その魅力が巧く伝えられるかどうか心もとなく、

   斎藤茂吉と絡めることにした。大会迫った9月、NHKラジオ

   「危機の時代の歌ごころ」で今野寿美先生が葛原妙子を紹介

   された時には、とても心強かった。

      さて、大会前日、心配された感染も小康状況で絶好の旅日

  和となった新岩国駅に、りとむの歌友数名と、短歌には門外漢

  の連れ合いともども降り立った。夜の懇親会(大会の前夜祭で

  もあろう)まで、日々の愁いを払うかのような秋空の下、岩国短

  歌協会や地元のボランティアの方々のガイドで岩国の名所を

  次々と案内して頂く。宇野千代邸、岩国城、吉川資料館、…

   そして錦帯橋と、岩国への「地元愛」が随所に感じられ、こちら

   も「とびきりの岩国」を満喫できた。

     夜の懇親会で「撰者賞」に選んだ作者の方々と、親しくお話で

  きたのも、楽しい思い出だ。硬質な漢語を使う作者は男性?と思

  いきや控え目な女性だったり、愛らしい孫歌の作者が、お祖母ち

  ゃんと呼ぶのも憚られる若々しい方だったりで、話が弾んだ。

    行き届いたおもてなしのおかげか、当日は余分な緊張がほぐれ

  講演に集中することが出来た。岩国市民文化会館大ホールの

  壇上、懸垂幕には「茂吉『赤光』から葛原妙子へ 現代短歌の

  可能性」と、演題が我が名と共にくっきり記されている。立派な

  懸垂幕を背にプレッシャーを感じつつ、よし、やるぞ、とテン

  ション上がる90分。聴衆の中に「りとむ」の仲間の顔を見つ

  けた時は、何とも言えぬ安心感を得たものだ。

     今回、撰者と講演の任を無事果たせたのも、短歌の縁でつな

  がる方々の支えあってのこと。地道に短歌を続けてきて良かった

  とつくづく思う。願わくは夕雲を宿した錦川の水面を、美しい

  五連の反り橋から再び眺めたいものである。

 


    岩国市民短歌大会に参加して          髙木 泉

    学生時代の友人が岩国出身で錦帯橋の近くの高校だという話を

 聞いてからいつか岩国に行ってみたいと思っていましたが、今回

 五十年ぶりに夢が実現しました。

 錦帯橋、吉香公園、宇野千代生家、吉川史料館、岩国城、岩国

  シロヘビの館を車で案内してくださったのは、りとむ会員の

  大島さん、原田さん、藤本さんご夫妻をはじめとする岩国短歌

  協会の皆様で、どこも丁寧に説明していただき、吉川史料館で

  は、美しい庭を拝見しながら抹茶と和菓子をいただけて感激し

  ました。

   憧れていた錦帯橋は、錦川の清流とともに美しく、下から見た

  ワッフルのような模様に見とれてしまいました。

   岩国で、私がとりわけうれしかったのは、「りとむ」誌面で

  お名前 だけ、また、りとむオンライン歌会で画面越しにお目に

  かかっていた岩国のりとむ会員の皆様に、直接対面して、お話

  できたことです。

    「りとむ」誌面でお名前だけ拝見していた、大島さんには、

  親切に案内していただき、幸田さんと津村さんとは、懇親会

  でお話できましたし、『歌集あけぼの杉』を出版された原田さん

  には、吉川史料館でお目にかかり、岩国に真っ直ぐに立つ

  あけぼの杉を仰ぐことができました。

  オンライン歌会に出席されていた藤本さんご夫妻は、なんだか

  お目にかかるのが初めてではないような感じで、ご夫妻それぞれ

  懇親会で、寛さんは、大島さんと「錦帯橋」を連吟され、征子

  さんは、舞踊を披露され、短歌だけではなく、広い趣味をお持ち

  なのだと感動しました。

    岩国市民短歌大会で講演された寺尾さんの演題は

  「現代短歌の可能性―葛原妙子と斉藤茂吉」。私はいままで、??

  でよくわからなかった(私の読解力不足のせいですが)

  葛原妙子の短歌をわかりやすく話してくださり、これからは葛原

  の 短歌を、きちんと勉強しなければとわくわくしています。

    岩国の皆様にあたたかく迎えていただきまして、忘れられない

  旅になりました。
 
        


         シロヘビと葛原妙子   氏家長子

  岩国の印象を一言で言えば、よいところでした。ありきたり

  の言葉で申し訳ないのですが、本当によいところでした。

  錦帯橋や岩国城などの歴史的建造物、美しい自然、それらを

  誇りに思い、 大切にしている岩国の人びと、感動でした。

   今回の旅の目的は、寺尾さんの講演を聴くこと、りとむの皆様

  に会うこと、そしてシロヘビに会うことでした。もう何十年も

  前、修学旅行で岩国を訪れたときに見たシロヘビがずっと

  脳裏に焼き付いていました。私は爬虫類が大の苦手で、

  怖ろしいが故に忘れることができませんでした。

   岩国城からロープウェイで下山したところに、シロヘビの館は

 ありました。中に入ると、エリザベス女王の棺を載せていたような

 ガラス張りの立派な御殿に、シロヘビはいらっしゃいました。

  美しくとぐろを巻いて眠っているものや全身をうねらし、舌を

  ペロペロ出して愛嬌をふりまいているものなど、しばらく見入

  って しまいました。シロヘビは神様の使いといっても、やはり

  怖ろしくてスマホで写真を撮ることはできませんでした。

  岩国には繁殖のノウハウがあるとのこと、それもミステリアス

  です。

   翌日はいよいよ寺尾さんの講演会。私は緊張していました。

  それは、葛原妙子のお話だったからです。一読してさっぱり分

  からず、二読、三読してもやっぱり分からない葛原妙子は私に

  とってオカルト、遠い歌人でした。そんな私に、寺尾さんのお話

  がじわりじわりと染みこんできます。

  明瞭な話術と斎藤茂吉→葛原妙子の構築に、プロフェッショナル

  のわざをみました。葛原妙子って凄い歌人なのだ、私はこの日の

  講演で畏れを抱きました。そしてシロヘビの呪縛と入れ替わるよ

  うにして葛原妙子が心を占領したのです。

   もう一つお伝えしたいことは、原田俊一さんの歌集に登場する

  あけぼの杉のことです。このあけぼの杉の大きさには度肝を抜

  かれました。驚異的な円錐形の樹形は遠いところからでもはっき

  りと見えました。ちょうど紅葉の最中でしたが、完全に葉を落と

  して裸木になった冬の姿、夏の青葉の姿もきっと圧巻だろうと

  思います。いつかまた、その姿を見に行きたいと思っています。

 最後になりましたが、このような素敵な出会いの場を作って

   くださった藤本様ご夫妻をはじめ、岩国の皆様に心から

   感謝申し上げます。

   


      岩国市民短歌大会に参加して  幸田 堯子

  2022.10.22 第四九回岩国市民短歌大会の前夜祭が

  夕方六時より岩国観光ホテルで行われた。

    今年の講師の先生はりとむの寺尾登志子さんなので、

  何が何でもと出席させて頂いた。

  他に寺尾さんの御夫君、加納亜津代さん、千家統子さん

  氏家長子さん、松繁美吉さん、高木泉さんが来て下さり、

  懐かしいりとむ風を吹かせて頂き嬉しさで一杯となった。

  りとむ九月号をバックに入れてそれぞれの方の歌を思いながら

  密やかに心を温めていた。

  皆様それぞれ何年かいや十何年のギャップのなか、お元気で

  はつらつとしていらっしゃるお姿に流石と思ったことだった。

   翌10.23 10時 岩国市民文化会館に於いて大会は開催された。

  広い会場にコロナ対策、ゆとり充分、私は歩行器くんと一緒に

  最後部座席に陣取った。

    演題「茂吉『赤光』から葛原妙子―現代短歌の可能性」

  寺尾さんのふくよかなにっこり笑顔で舞台中央に立たれた。

  しーんと静まりかえった空気をほぐす様に話しはじめられ、

  後ろまでよく通る話し振りだ。『赤光』のたまらなく変な歌を

  三首上げられ、これにはすっかり心を奪われてしまった。

  そして『赤光』は異化の歌集であるとしっかり話された。

  次に葛原妙子へと続く。妙子独特の慄然としたイメージ作りの

  こと、球体不安というテーマにも興味深く解説して下さった。

  妙子歌集 より十二首あげられとても楽しかった。内容がとても

  わかり易く、一時間がいつの間にか過ぎていった様に思う。

   最後に、寺尾講師賞七名の受賞式並びに記念写真が終り

  午前中の行事が終了した。

     寺尾さん長時間ほんとうにありがとうございました。

  すっかり魅了された講演だった。

  

 
 



   

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