画像で見る「りとむの風景」

「第2回りとむオンライン歌会」 報告記





                       高 橋  千 恵

  
    *第2回りとむオンライン歌会報告記     高橋千恵
                                

    前回、西塔玲子さんがオンライン歌会の流れや当日の様子を

 とても丁寧に綴られていらっしゃるので今回は私は舞台裏をちょこ

 っとお伝えしたいと思います。

  オンライン歌会の受付は西塔玲子さん、土井絵理さん、高橋の

 3人で参加される皆様をお迎えしております。「りとむ」が届く

 と少しずつ、参加希望(聴講希望)のメールが届きます。

 参加希望の方の提出される作品のページ、何首目、初句、

 連絡先を3人が各自、届いた順にExcelに入力してゆきます。

 そして〆切後、それぞれの入力したデータをお互いに間違えが

 ないかチェックします。

 入力の際に気を付けていても…電話番号の数字一桁を間違え

 てしまっていたり、作品がページを跨いでいた時の「何首目」

 例えば5首目というのは全作品を通しての5首目なのかその

 ページの5首目なのか、で提出歌が変わってしまいますので

 どちらか悩ましい場合は作者さんにお伺いします。

 (こういうケースがあるため、初句を添えていただくととても助か

 ります。)

 と受付からのお願いも報告記にてお伝えさせていただきまし

 たが…

 2回目のオンライン歌会は参加者51名、聴講者12名。A、B、C

 の3つに分かれる1グループにちょうど17人ずつ、で始まりま

 した。

 講評は1人約3分ということで今回Aグループを三枝昻之先生、

 Bグループを今野寿美先生、Cグループを和嶋勝利さんが評者

 をしてくださりました。

 あっという間のような気がする3分ですがが先生方の丁寧な

 講評、そして最後に作品の背景など評者と作者のやり取りは

 和やかで笑顔を拝見するとこちらもなんだかあったかい気持

 ちになれます。

  私は新型コロナウィルスにより東京歌会が中止となってしま

 いこの1年、なんだかこころにぽっかり穴が開いてしまったの

 ですが、また新しい形式で歌と向き合える時間が出来たこと、

 みなさんの歌に対する真摯な姿や楽しむ様子に励まされて

 いる私がいます。

  うたの仲間って、友達とか仲良しの同僚ちゃんとはちがう、

 何かあります。その何かを言葉にするのは難しいのですが、

 うん。良いです。改めてそう思いました。

 

今野先生のカルチャーラジオの感想  2021年5月
 
 今野先生のNHK文化センターの講座「いま、心に響く歌の力」

   がラジオで放送されました。

   2021年1月7日より3月25日までの毎木曜日。

   りとむ会員の皆様から感想が寄せられましたので掲載します。


   1月7日から始まったカルチャーラジオ文学の世界の、3月25日

   の最終回を聴き終えた。それぞれの歌集の〈いま心に響く歌の

   力〉は、私の心に重く哀しく美しく届けられた。

   今野先生の解釈の深さと温かさが、甘い調べとなって魅了され

   た三か月であった。

    今更ながら、人はなぜ歌を作るのかを教えられた思いだ。

    病、災害、そして家族への愛などがテーマであった。手許に

    置きたい歌集は何冊か買った。

    25年前、私も大病を患い死を覚悟した。そしてあの頃の歌を

   久しぶりに読み返してみた。現実から目を逸らさないで、自分

   なりの表現が出来ていただろうか。最終回の大西民子に触れ

   ての言葉の重さに共鳴した。

    「これで終わります」今野先生の静かな声が今も聞こえる。                                                                                            乃川 櫻


   東野さんの歌集からは、痛む心、安堵、やり場のない落胆、

   不安、立て直す意気等が伝わり共感しながら拝読いたしました。

   今野先生のお話は東野さんの代弁者の様で、動揺いたします

   私の気持ちを諄々に整理してくださいました。歌に内在する力が

   大きいと此のように詠み手と読み手の交流を可能にさせてくれ

   るものと改めて知りました。東野さんの勇気、潔さ、深き愛情

   ゆえの苦悩が心に残ります。歌集で体験させて頂く視野広き

   豊かな人生をとの思いに至りました有難い拝読と、今野先生の

   お話でした。詠草に向かう姿勢もいかなるものかと心中巡らして

   おりました。

    今野先生の最後のお話に「現実を見て自己の表現を模索する

   ことです。私達も悪戦苦闘したいものです」とお聞きして、

       一歩前進の思いに嬉しく心に収めました。   髙林敏子


   カルチャーラジオ、聴き逃しても大丈夫、後から聴ける方法を

   藤本さんから教わっていました。それは保険で置いておいて、

   私は放送時に何が何でも聴こうと思っていました。

   午後8時30分、その時刻は帰宅途中になるので、木曜日は

   コンビニの駐車場に寄り道をすることに決め、温かい飲み物

   と菓子パンを買ってカーラジオで放送を聴いていました。

   今野先生のお声とお話は、毎回心に沁みとおり、元気を与えて

   くれるものでした。

     いよいよ3月18日、われらが東野登美子さんの歌集、どんな

   ふうに今野先生がお話しされるのか、いつにも増してわくわく

   しておりました。東野さんの歌集『豊かに生きよ』は以前から

   読んで いて、感動もいっぱいして、東野さんご自身とも交流さ

   せてもらっていたので歌の背景や東野さんの生き方を少しは

   わかっていたつもりでした。しかしそれは、あくまでもわかった

   つもり、

   今野先生の深い解釈を聴いて考え直しました。「腹を括る」

  「きれい事ではすまされない」「覚悟」、このような言葉も

  これまでは薄っぺらな理解だったと思い知らされました。

  「白色が喪を表す国もある」と言ふべきときも黙ってゐた罪取り

  上げられた9首の中で、最後に紹介されたこの歌が私には

  驚きでした。この歌は歌集では第二部、東野さんの教師としての

  歌のひとつです。娘さんを詠っている第一部とは別々のように感

  じていましたが、今野先生は「多様性」という言葉で結ばれ

  ました。根は地下で、しっかりつながっていたのだと、

   目からうろこの一瞬でした。

    2日後、Zoomで感想を発表し合ったことも大きな収穫でした。

  東野さんの思いが直接聞けたこと、また自分が東野さんの立場

  だったら、と本音で語り合えたことがとてもよかったと思い

  ます。

  このような信頼関係と居心地の良さは、

  今野先生がおっしゃった「多様性を認める」空気が、

   りとむにはあるから、と納得しました。  
                                                                          氏家長子


   「自分のためだけでなく病む存在として受け入れる」という

   テーマで選ばれた東野登美子著『豊かに生きよ』の放送では、

   自閉症だというお嬢さんを詠んだ短歌を取り上げられました。

   リズムよく淡々と話され、言葉を選び30分間一コマは早かっ

   たです。自閉症のこともはっきり詠われ、隠しごとをせず、

   きれいごとですまされない重い現実も表現し、東野さんは

   本音を詠うことで読者をひきつけました。また社会とつながり、

   自分自身の心も開放され浄化につながったのではないかと

   今野先生は話されました。わたしも先生のお話をお聞きして、

   東野さんの本を読み返し、ほんとによい歌集だと思いました。

   「ああそうだったんだなあ」と私も本音を詠うことは大切だと

   思います。涙なしでは読めませんでした。こうして先生に取り

   上げてもらい広く社会に広がり、東野さんの心にぽっと灯が

   ともり、浄化にもなったのではないかと思いました。

 他の回も災害に遭われた方などを取り上げられ、

  胸がいっぱいになりました。

  現実はつらいこともありますが、どう表現するのか、また自分

  自身のめざしている短歌を見つめていこうと思いました。
                                                      有岡和子
 

  木曜日の夜八時半が特別な時間になった。勇気づけられた歌、

  切ない歌、時には絶望を感じた歌もあった。でも、今野先生の

  穏やかな語りを聴いていると、番組終了後は決まって、心が洗

  われた気分になった。りとむ関西のグループLINEで感想を述

  べあったり、番組で取り上げられた歌集をレターパックで回覧

  したり(私は借りるばかり)、今回ほど、りとむ関西のメンバー

  で良かったと思ったことはなかった。中でもりとむ関西の

  メンバー、われらが東野登美子さんが取り上げられた

  前後は、盛り上がった。

 東野さんについては、他の方が書かれるだろうから、

  私は遠藤たか子さんについて書こうと思う。遠藤さんは現在は

  りとむを退会されたそうだが、『水際』発行時は会員でいら

  した。

  また、新しい歌集に採られた歌はリアルタイムで読んだ物も

  ある。「わが生れし前よりひびく水の音ふしぎだ汚染はしてない

  といふ」この歌は、「りとむ」2019年11月号の今月の

  十首詠 だった。

  私はこの月東京歌会の司会担当で、歌会前に遠藤さん

  と会話した記憶がある。また、沖荒生さんと寺尾登志子さんが

  歌評をしたと頁に書き込みがある。思えばコロナ前のごく普通

  の歌会だった。自作の歌には当然、自分の思い出があるが、

  仲間の歌にも自分の時間が流れているのだと改めて感じた。  
                                                                      松山紀子
 

  <いま、心に響く歌の力>が全体のテーマだったので

  「コロナ禍と短歌」からスタートしたのは言うまでもありませ

  ん。

  2020年コロナ感染初期から各雑誌に発表された歌人たちの

  作品に隈なく目を通し、かつ100年前のスペイン風邪流行を

  詠んだ茂吉や晶子の歌を掘り起こし、比較分析するのは根気

  のいる作業だったはずです。今野先生自身はなるべく

  <コロナ>という忌まわしい語を避けて作品を成し、それまで

  当たり前だった日常の危うさと新たな日常への視座を、数多

  の作品に触れながら解説されました。

  •これっきりそれっきりなのかも知れず○○○頃合いなる理由

  なり 今野寿美 俵万智著『未来のサイズ』2020年9月刊には、

  コロナ後の新たな「日常」のヒントが詰まっているとの指摘が

  あり、本年度の釈迢空賞受賞の報は4月に届きました。 

  •「選ばれる地方」「選ばれない地方」選ばれなくても
                            困らぬ地方  俵万智

 その後、「社会のなかの個人」、「災害を超えて」、

  「自分のためだけなく」などあらゆる切り口で先生の取り

  上げられた歌集の反響は大きく、りとむ関西メンバー間で

  歌集の購入や回覧の動きがあり、自分の作歌姿勢を振り

  返る良い機会となりました。

 最も心待ちにして迎えた『豊かに生きよ』の回、

  作者の東野登美子さんの佇まいをかくも正確に捉えられた

  先生の言葉に、頭が下がりました。「ためらいながらも作品化

  することで社会に発信され、結び付いてゆく」…短歌の<力>を

  信じたいと思いました。

    •「かあさんでゐるのにほんとつかれたよ」知らんぷりする
                                                千穂と神様 東野登美子

   •自閉児に心はないといふ学者の心はどこにあるのだらうか

  我が子の人格を否定された気がしたとき、沸き起こる感情を

  詠い発信し、読者の記憶に刻まれるプロセスを体験した思い

  です。東野さんは短歌の他に短編小説を発表されたり、

  インスタで千穂さんの姿や手織り作品、ベランダの雀など

  ほっこりするものを発信されています。一度覗いてみてくだ

  さい。お勧めです。

 まだまだ書ききれない思いを反芻しながら、

      コロナ第四波の関西に蟄居しています。
                      栗田明代 


  心の底からの思いを、時にはさらけ出すような形で作品とし、

  それを読者と共有することによって社会と切り結ぶ、という

  観点での今野先生の歌集の読み解きを感慨深く聞かせて

  戴きました。とりわけ楠誓英歌集『禽眼圖』、

 東野登美子歌集『豊かに生きよ』の回は印象的でした。

 楠誓英さんの第二歌集『禽眼圖』は、題材とされたものが

  作っている影、切り取られた景の背後にあるものも読者に提示

 するような作者の深い視線が印象的で、第一歌集『青昏抄』と共

 に、好きな歌集の1冊でした。それだけに、今野先生が「作者にと

 って、こどもの時の地震災害の体験が、成長の過程で生と死を

 自分の内側に位置づけるものとなった」とされ、阪神淡路大震

 災による兄との死別、兄の死後、作者に苛酷な期待をかける

 ようになった父と作者の間の葛藤、〈銃剣を念珠にかへて〉

 〈戦後をおそれて行きき〉と詠まれている祖父のことを軸に

  この歌集を読み解かれたのが心に残りました。講演の中で

 言われた「明と暗、生と死の対照を常に抱え持って思索する」

 という言葉、この回のタイトル「生と死の境界を思索する」には、

 歌集一巻の内容が凝縮されているように感じました。

 東野登美子さんは「りとむ」で身近な方でもあり、

 今野先生が『豊かに生きよ』の回のお話のまとめの形で

 〈「白色が喪を表す国もある」と言ふべきときも黙ってゐた罪〉

 を取り上げられ「多様性を認めるということは他者を尊重する

 ことであり、作者はその心に基づいて生きようとしている」

 「試練の日常、個人の苦悩を作品化することによって発信し、

 読者と共有しようとしている所に、社会と個人について考える

 重い意味がある」と言われたことが印象的でした。

 『豊かに生きよ』の作品の中で私は〈この夏は咲かずに

 終はりし睡蓮の鉢にカラスが水浴びにくる〉など、日常の何気

 ない景に目を止められた作品に多く付箋を付けていましたが、

 今野先生の言葉を聞いて、それら実景の歌々の印象も

 また濃くなったように感じています。

 さて、関西のメンバーの間では、この度今野先生の放送で

 取り上げられたものをはじめ、歌集を互いに貸し借りして読む

 ようになりました。放送を機に、そのような形でも歌会が充実し、

 良かったと思っています。            
                                                           小潟水脈


 今野先生の1月から始まったカルチャラジオ「文学の世界」

  の初回から驚きの連続。

 コロナ禍の歌なのに、「コロナの文字を使わない」桑原正紀氏

 の歌をひかれ、奥深い歌評に、ついつい引き込まれ、

 次回が待ちどうしくなった。 

 色々なことを教わった。

  歌には、「直球もあり」「変化球もあり」、

 速度も「200キロもあり」「2キロもあり」と。

 ざっと読むことの多い私にとって、勉強になりました。

 ありがとうございました。 
                                                                 藤本寛


 パソコンの「らじるらじる」を知らなかったので、リアルタイム

 で周波数を合わせラジオをあちらこちらに向けて聴きました。

 3月18日の東野さんの「豊かに生きよ」の時は今野先生が

 どの歌を選ばれるのかわくわくしました。

  ・四歳で「アイ」と言葉を発してより我が家は君の愛で溢れた

  ・きみでないふつうの子どもの母親になりたい夜の大雨警報

 私の好きな歌です。先生も選ばれていました。

 先生の優しい声と細やかな歌評に引き込まれていきました。

 余韻が残るいつもとは違う日常を味わうことが出来ました。              
                                                          山地ひさみ


 どの回も充実した内容で、聴き逃し配信に何度もアクセスしま

 した。なかでも、宮下自由さんの「光への階段」はすぐに購入。

 頁を繰るたびに眼鏡が曇り、自由さんに「死ぬのはちょっと

 待て、おまえが死ぬときには淋しくないように、お父さんも一緒

 に死んでやるから、神様を信じてもう少し頑張ってみよう」と

 仰ったお父様に、私自身、叱咤激励されたような気がします。

 まだまだ頑張りが足りませんよ、と言われたようで、背筋が

 伸びました。

 都合3回は、傍に娘が居たのですが、どこから聴こえてくるの

 だろうというような顔をしつつも、微笑みながら静かにしてい

 ました。とても心地よさそうで、身体全体で聴いているようで

 もあり、先生の声がそのまま身体の奥深くに入っていくようでも

 ありました。言葉と声の不思議をみているような体験でした。

 拙歌集をお取り上げくださった回については、有難くて冷静に

 語ることができません。拝聴したときのことを思い出すだけで、

 今も胸がふるえます。職場で親しくしてくださる看護師さんに

 放送のことをお知らせしたところ、何度も聴いてくださり、

 他の看護師さんや福祉士さんにも知らせてくださいました。

 拙歌集を職場の皆さんが読んでくださいました。

 今、職場では、障害のあるかたたちと一緒に短歌に取り

 組もう!という計画が進んでおり、これをなんとか形にしたい

 と思っています。

 今野先生が起こしてくださったミラクルです。

           ありがとうございました。            
                                                   東野登美子



   

【 トップページへ 】     【バックナンバーへ】

 

inserted by FC2 system