画像で見る「りとむの風景」

「第22回りとむ関西歌会
(ZOOMオンライン歌会の感想」

自歌自註を中心に
2020年11月

関西歌会の皆さん
     
    新大阪で、一年ぶりに皆様にお目にかかれることをとても楽し

  みにしていました。そのわくわく感、相聞歌二首を提出したこと

 でもわかっていただけると思います。オンライン歌会に変更に

 なりましたが、充実した時間を過ごせて、やはり歌会っていい

 なあと 思いました。

◆自歌自註

1焼き芋をさっくり割ってあなたとの秋あたたかく闌けてゆきたり
                                                                氏家長子
13 髪を洗う歯を磨くその線上にひとを愛することもありたり

   一首目。順番で自分の歌を批評することに…、恥ずかしかった

  です。他の方から、相聞とは限らない、「あなた」は親しい

 女友達ともとれるのでは、とのご意見をいただき納得。

  二首目。ひとを愛することは、髪を洗う、歯を磨くといった

 日常の行為と同じようにあるとの思いで作りました。

 それ以上のことは考えていませんでしたが、誰かを愛する

 ために、また愛してもらうために、髪を洗ったり歯を磨いたり

 する女心が表れていると読んでくださった方がいました。

 とても素敵な読みに感激するととも に、私まだまだ女子力が

 低いなあって思いました。

    歌会の最後に作者名を公表し、歌に込めた思いなどを発表す

    る時間がオンラインでは取れなかったのですが、こうして歌会

    を振り返り、再読できることを嬉しく思います。ありがとうご

 ざい ました。                氏家 長子

        オンライン歌会感想
             
    三枝先生が「りとむ」11月号に書かれていた「オンラン会議に

    思うこと」には、そのとおりだと思っています。また、誰彼

  と雑談 する時や場があるかどうかによっても、作品の

  イメージや批評 の感触も微妙に違って来るようです。

  他方、Zoomでも集合の歌会でも、司会者としてみんなの

  発言をまとめながら自分も各作品にコメントするむずか

  しさは同じだと感じています。


◆自歌自註

9小さな虹もさがしてみよう家ぬちに四角い日溜りいくつある日は
                                                           小潟水脈 

   窓から入ってくる光の形を見て、家のどこかにガラスや鏡が虹

   を作っているのではないかと思った歌です。実景を詠んだもの

   ですが、もしこれが「恋の心象風景」などと解釈されるなら、

 モチーフとしてはあまりに平凡ではないかと作ってから気づき、

 読者 にどのようなイメージで受け取られるか気になっていま

 した。それだけに「光が分解されて・・・」の発言にはホッとした

 ものでした。歌会での批評も参考に、まず上句で日射しの実景

 を出して下句に虹を捜すという行為を置いた方が良いかなど、

 今なお 模索、検討中の一首です。         小潟水脈


◆自歌自註

    4 キーウィの皮剥きながら足首を交互に廻す 朝が始まる
                                                   栗田明代

    くるくると綺麗に皮を剥くには集中力のいる果物キーウィ。

  片脚ずつ上げて足首をぐるぐる廻す朝のウォームアップと

  連動させ、一首も生まれたら一石三鳥、と上手くいったか

  どうか。字足らずの破調かもしれませんが、やはりここは

  柿や林檎には譲 れないのです。

 16「大阪には都は合わん」と言いそうな織田作の声亡父の相槌

 都構想またもや消えてコロナ禍の大阪モデルに点く赤信号・・

   12月に入り、吉村知事の憔悴した表情が気の毒でなりません。

      古代の難波宮、高津宮は別にして、大坂・大阪は国政には不

      向きな土地柄、平たく言えば商売人の町なのです。市井の人間

      模様を描いた織田作之助だったらこう反応したのでは? 同窓

     だったわが父と「しゃーないなぁ」と掛け合いコントのよう

  に会話 したに違いありまん。     

☆私の好きな歌
     3 霜月の池の恋バナ水脈曳きて寄りて隠れて鳰の群れなす

   12 テレワークの夫と三食共にして慣らし定年の春とはなりぬ

   24 メイドインジャパンの矜恃持ちながら野に古りゆける
     ポンプの一基                          栗田明代


◆自歌自註

6 われ言いし「半分になってしまった」永田和宏に同じこと聞く
                                                       髙林敏子
 夫を失ってどのような気持ちかと問われおもわず「半分になって

     しまった」と申しました。その言葉を歌人の永田和宏さんが 

     TVの対談で仰ったのでびっくりしました。 偉大な歌人も私と

   同じことを言われたと。「永田和宏同じこと言う」ならすっきり

     とすると思いましたが、永田和宏と敬称も省いた上にこの表現

     はあまりにも失礼に思い「聞く」で表しました。 本当に何年経

     っても半分です。

    15 遥かなる河野裕子を語りつつ相聞の歌聞かせくるる人

     永田和宏さんと河野裕子さんは此岸と彼岸、互いに遥かな人

    となってしまわれましたが、半分となってしまわれた永田和宏

  さんのもう半分には河野裕子 さんがいつもいらしゃるので

  すね。相聞歌を永遠に、と願っています。 髙林敏子  
 

◆自歌自註

    3  霜月の池の恋バナ水脈曳きて寄りて隠れて鳰の群れなす
                                                乃川 櫻

      裏の池の周囲を、毎朝三周しています。ある朝突然、渡り鳥

      の鳰(カイツブリ)が数羽現れました。翌日は、50羽ほどに

  増え、そこここでまるで恋バナをしているように見えました。

  一週間ほど滞在し、彼らは去って行きました。また、どこかの

  池で恋の 駆け引きをしていることでしょう。

23三十点の理科のテストがヒコーキとなりて消えたり秋空の夢

       時間に間に合わなかったり、走っても追いつけない夢を見る

       ことがあります。 秋空に、吸い込まれていく紙ヒコーキ。

      理科のテストに翼が生えて、真っ青な空の彼方に消えた。

      理科アレルギーは、夢の中まで私を翻弄するのです。
                                乃川 櫻



◆自歌自註

10 たましいの右にはいつも鬼がいてよしなしごとを囁いている
                                                  東野登美子

  19 人間と仲良くなった赤鬼は楽しく暮らしてゆけるだろうか

     「鬼滅の刃」を見たことはないですが、話題になっているとの

      こと。鬼滅という言葉を耳にするたび、傍らに鬼が居るような

     気がして、何首か鬼の歌を詠んでみました。自分の中の鬼を

      自覚し、できるだけ鬼を抑え込んでおきたい、と思いつつ・。

☆一首評

      14 体液の一つであるに涙とぞ人は見るかな亀の産卵

      亀の生態に人間の感情が被さって、生物とその誕生の不思議

     を思わせる歌だと思いました。実は、中学生のころ、草野心平

     の「ぐりまの死」を評した国語の先生が、「カエルには感情

    なんてないと思いますか?感情とまではいかずとも、

   えっ?とか  ぎょっ?という感覚はあると思いますよ。

  突然殺されたカエルの無念さを感じませんか?」と仰った

  ことを、ふいに思い出しまし た。これらは人間の感情の

  投影にはなりますが、産卵時の亀の体液 は、産みの苦しみ

  と喜びを現すため に絞り出された涙なのではな いかという

  思いに、とても心が揺れた一首でした。
                                        東野登美子

◆自歌自註

   2 マックにて食べては喋る女学生おじさん一人ぽつんと座る
                                                     藤本 寛

   マックの傍のお店でコーヒーを飲んでいると、マックに来られた

      シニアーの男性がマクドナルドを注文され、一人静かに食べ

      始めれられ、女学生とは対照的で、シニアーの男性の心境を

      想像しながら、歌にしました。皆さんの歌評で、水脈さんの

      「マックの言葉は必要」と言われ、「歌意が通じた」気がして

     嬉しかったです。

21 川霧に霞んでみゆる今津川ふと口ずさむ「さぎりきゆる」を

       週3日、息子の家の犬を散歩させています。今津川に霧がか

       かり、思わず唱歌「さぎりきゆる・・・岸に家・・・」を口

   ずさんだ時の歌です。

☆好きな歌

   4 キーウィの皮剥きながら足首を交互に廻す 朝が始まる

       なんとも、自然体で「足首を交互に廻す 朝が始まる」が

       いいですね。

10たましいの右にはいつも鬼がいてよしなしごとを囁いている

        魂の字をユウモラスに表現されたところがいいですね。


   13 髪を洗う歯を磨くその線上にひとを愛することもありたり

    「その線上に」が、何とも不思議な響きがあり、

   いいですね。                                        
                                                                     藤本 寛

◆自歌自註

       8 日の恋し部屋にこもりて浴衣とく二十歳の香る朝顔模様
                                                     藤本征子

        コロナ禍でマスクを縫うため不要な浴衣を日の当たる部屋

        でといたまでです。

        皆様のご批評有り難く受け止めました

     18 座るのも立つにも腰の痛むなり亡母の十八番(おはこ)
                                                                    お灸懐かし

  姑がお灸上手でご近所のお年寄りが我が家に集まりお灸を

    してあげたりもらったりしていた頃を思い出した次第です。

    今では私がお灸をして欲しい心境です。

☆私の好きな短歌

     3 霜月の池の恋バナ水脈曳きて寄りて隠れて鳰の群れなす

     「池の恋バナ」 最初は解釈に困りましたが下句で納得、

   ロマン があり素敵です。

   13 髪を洗う歯を磨くその線上にひとを愛することもありたり

       何気ない日常の線上 この言葉の使い方が素晴らしいです。

    19 隠し味に愛情少し入れており残業続く夫との夕餉

       夫婦愛の歌にひかれました。       藤本征子



◆自歌自註 

       5 道端にゴミ落ちてをりわが街に大学生が戻りて来たり
                                                 松山紀子

      最寄り駅の反対側に私立大学があるので、私の住んでいる

       街には今まではたくさんの大学生が住んでいました。節税の

       為に、敷地にワンルームマンションやアパートを建てている

       家も多いのです。新型コロナの影響で、大学が対面の講義を

      やめてオンラインにした事で、学生さんはいなくなりました。

       秋以降、対面の講義が復活し少しづつ学生さんが戻ってき

       ました。すると…道に空き缶やペットボトル、お菓子

   の袋が…。雑多なゴミは生命を感じさせて、私はゴミが有る

   ことが嬉しかっ たのです。街に活気が戻ってきたのが嬉し

   かったのです! 

      でも、皆さまから、大ブーイングでしたね。歌の構造に問題が

      あったのでしょうと素直に反省しています。

   12 テレワークの夫と三食共にして慣らし定年の春とはなりぬ

    夫は春以降在宅勤務です(今も)。定年まであと数年ですが、

       思わぬ形で定年状態を経験する事になりました。「慣らし

   定年」は私の造語です。藤本寛さんから、「三食共にして」

   を「共にする」にした方がよいと指摘を受けましたが、

   そうすると意味が 限定されてしまいます。

   私としては食事を始めとした生活全般を表現したかった

   ので、小潟さんが「このままでいい。」と仰って下さった

   のを幸いに、このままにしたいと思っています。

☆印象に残った歌

10たましいの右にはいつも鬼がいてよしなしごとを囁いている

  うまいなあと思った歌です。「たましいの右」は皆様ご指摘 

  のとおり、漢字の「魂」でしょう。その他に、私は、もしかし

   たら、現世を右、あの世を左という考え(何かで聞いた

   ことありませんか?)も入っているのかもと思いました。

   現世をたくまし く生きる私の魂にはいつも鬼がいる。

   「よしなしごとを囁いている」という下の句がまたまた

   うまいとほれぼれしました。


☆批評の当たった歌

     8 日の恋し部屋にこもり浴衣とく二十歳の香る朝顔模様

     読み間違えをしていて、大変失礼いたしました。

   もう一度読み 返してみて、下の句の「二十歳の香る

   朝顔模様」で、十分に若い日を懐かしむ気持ちは出てい

   るので、初句はもっとさりげない言葉の方が、私のような

   読み違いが出ないように思いまし た。自分の事は棚に

   上げて申し訳ありません。
                         松山紀子


◆自歌自註

 11湯船にて疑問の一つ解けにける小さな巨人のパソコンのこと
                                                    水口瑠衣

       どうしてもわからなかった事がリラックスしたら 納得できた

     次第です。

  14 体液の一つであるに涙とぞ人は見るかな亀の産卵

      見る人の主観により物事が変わると感じると言うことです。
                                                   水口瑠衣

◆自歌自註

 7 文集に警察官になりたいと書きし子の夢とどく秋の日
                                          山地ひさみ

   警察官になることが夢でした。しかし、大学卒業後、夢を諦め

      て就職をしました。今年三十歳になり最後のチャンス(年齢制

      限がある為)に挑戦しました。藤本寛さん、松山紀子さんの歌

      評をいただきありがたく思います。私の思いが伝わりました。

☆私の好きな歌

1焼き芋をさっくり割ってあなたとの秋あたたかく闌けてゆきたり

9 小さな虹もさがしてみよう家ぬちに四角い日溜まり
                       いくつある日は

22三十点の理科のテストがヒコーキとなりて消えたり秋空の夢

      オンラインでの歌会は緊張感があり毎回ドキドキしてして

   います。

        これからもよろしく お願い致します。                                                           山地ひさみ

          


  

画像で見る「りとむの風景」

「関西歌会(オンライン歌会)詠草」

2020年8月

粟 田  明 代
       第1回りとむ関西ZOOM歌会詠草 令和2年8月13日 
   
                
    ①香炉灰重くしめりて待ち人の未だ来たらず雨脚強し    水口


    ②範吟に聞き入りそこに川中島遠き世界に我を引き込む  藤本h


  ③オンラインの前にあわててルージュひく慌ててマスクをする
        所作に 似て                                                        栗田


    ④冷却マスクをひすがら作る誰彼の目許涼しく映りぬるかな 乃川

  
    ⑤夫作の玉葱つるす軒先にツバメの主は出たり入りたり   藤本s


    ⑥持参した珈琲が香り病室の夫は「これが旨いんや」と言う 有岡


    ⑦真向いの象頭山(ぞうずさん)よりもこもこと雲あらわれて
    雨ふる気配                                              山地


  ⑧桃ふたつ灯下にうぶ毛を光らせるそれぞれを思い
        合う表情に                                                     氏家


  ⑨暗雲に風神雷神駆けつけて激戦ののちの月のさやけし   髙林


  ⑩破顔にてピースサインの少年の胸のあたりの“U.S.ARMY”  東野 


  ⑪鉄板を切り抜いたやうなシルエット黒猫となりライト抜けたり  小潟

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