画像で見る「りとむの風景」


「 東 京 歌 会


2020年1月

井 本  昌 樹
 

       東 京 歌 会  2020年 1月  井 本 昌 樹
   
     穏やかな陽光に恵まれた一月東京歌会では、二十首詠第一

   位及び今月の十首詠に選ばれた、次の作品達が注目された。

    ひと晩中モニターを見て父を見て朝のひかり

    を全身で浴びる             榎本 麻央

    マラソンと競歩は東京逃げ出さん ほんとの

    空がないといふから        右田 研三

    僕のことをクビにするかもしれない人がバン

    ザイ三唱してる           柳澤 有一郎

    聞かれると不安に変わる〈大丈夫〉特別警報

    発令されて              高橋 千恵

    一首目。昏睡状態で病院に運ばれた父に付き添い、一晩中

  一睡もせず父とモニターを見続け、朝のひかりを全身で浴び

  ている。病床の父と、それを巡る家族の思いを細やかに歌い

  紡いだ挽歌の一連の、豊かな構成力が高く評価された。

    二首目。よく知られた詩句をやや茶化した下の句が、一首

  をうまく現実に引き戻し、一連が企業戦士としての自身の人

  生の、懐古ともなってなっているところが面白いと評された。

    三首目。「ご即位を祝い」に続き、安倍首相の発声により

  行われ陸自の号砲が唱和した、昨秋の万歳三唱が思い起こさ

  れる。洞察力を駆使した柳澤さんのバンザイ三唱が、何より

  も平和を願う天皇の即位を、憲法改正を志す首相の発声と号

  砲で祝った、あの時と同じものである可能性は極めて高い。

    四首目。〈大丈夫〉と聞かれた途端不安になった、初めて

  の避難所での体験が、臨場感を帯びて伝わってくる。

  

【 トップページへ 】     【バックナンバーへ】
inserted by FC2 system