10月歌会の報告を書くよう管理人岩内さんからご指名がありました。日数がたっていて、正確に思い出せるか心配ですが、
印象に残ったっことをまとめてみます。まだ新宿のりとむ歌会に出席されたことのない会員の方もいらっしゃいますね。新宿歌会は、新宿駅から10分ほどの、都庁や京王ホテルなどの高層ビルの一角にあるモノリスという瀟洒な29階建てビルの29階の一室で開かれます。いつもは、35人前後の出席ですが、12月などは、ぐんと増えます。お楽しみの忘年会がありますからね。

 奇数月の歌会はその月のりとむ誌から、出席者が一首を自選して読み、2、3人が指名されて意見を言い、更に意見のある人は挙手します。意見が出尽くしたあたりで、三枝さん今野さん(先生と呼ばない不文律)が交互にまとめの講評をしてくれます。

 偶数月は、前回提出しておいた一首(後から郵送可)の無記名の詠草集が偶数月の月初めに郵送され、それをもとに意見を交わし、講評を受けます。10月歌会は詠草でした。詠草のときのほうが気楽と皆さんおっしゃいますね。無記名なので、これは誰の歌かなあと考えるのも楽しみのうち。終わって配られる作者一覧をもらって、ああ、やっぱり、とか、え?このひとだったの?とか。おおいに盛り上がったいくつかをご紹介しましょう。


   ほの赤き茗荷きざみて入れたれば永谷園のあ
   さげにほひたつ


「ほの赤き茗荷」が目に見え、香りも伝わる、「永谷園のあさげ」という固有名詞が生きていると賛辞が続き、主婦の歌としたら、手抜きでうまくやったという歌になる、という意見がでて、沸きました。むしろ、男性の歌としたら、とても良い歌では・・・?との意見も。今野さんの講評は、確かに、よく出来ているけれど、作者が自分と知った上で読ませる計算がちょっと見えてくますね、そこが・・・と。作者は井本昌樹さん。稚くて可愛い顔して打ち込んだ切った流したそれ行けッチャア「どうしても意味がわかりません」「なんのことなのかさっぱり・・・」お手上げ状態に司会は「どなたか解かる方は?」いらっしゃるんですね、これが。歌会では、どんな難解な歌でも誰か解きほぐしてくれます。「この歌は、卓球の愛ちゃんを歌っているんですね。可愛い顔の愛ちゃんが、白球を打ち込んだ、切った、流した、とその動きをたたみかけて、ほら、話題になったでしょう、愛ちゃんがチャアとかシャアとか気合声をだすでしょ、それです」ああ、なるほどと皆、納得。でも、「卓球愛ちゃん」くらいの詞書きが欲しい、とも。詞書きが欲しいと指摘された歌はもうひとつ、


   殿軍(しんがり)をつとむる心の六十年ひと
   つの戦後ここに畢(おわ)んぬ


 これは島田修二氏の挽歌だということで。殿軍という言葉の入った歌が島田氏にあるそうです。でも、そう、よく知られてるわけではないし、と。「ひとつの戦後ここに畢(おわ)んぬ」という下句は概括的で良くない、と三枝さん。「誰の挽歌にでもなっちゃうでしょう、これは」と。愛ちゃんの歌は黒岩哲太郎さん、殿軍は杉下幹雄さん。


   年長けし女男が連れ合う姿美(は)し森の小
   径に木の実を拾う


 作者の視線が感じられる、とてもよく解かるなどと肯定的な発言が続くなか「いや、どうしても、分かりませんね、だからっていい歌なののか」という発言も。
結局、今野さんが「姿美(は)しはやはり言い過ぎていますから、そこにひっかかり、素直に褒められないことになるんでしょう」。これ、三枝さんの歌なのです。歌会が終わり、作者が解かってからの三枝さん、「いや、この歌を褒められるだけだったら困るとこだった。批判がでてこそ、さすがりとむ歌会です。実はこの歌、「短歌」11月号に、姿美しを推敲して出しています」


   年長けし女男が連れ合うよき姿森の小径に木
   の実を拾う


「短歌」11月号に「天目」という題で30首出されているなかに、こうなっていました。老若ふたりへの挽歌の一連のなかに置かれています。

「批判がでてこそ」ということで、手厳しい批判をふたつご紹介します。


   波たたぬめぐり、ゆくたて山峡(かゐ)をひ
   とすくひして甲斐市とはなる


 ひとつは「私はこのあたりの地形とかよくわかりませんので・・・」と批評辞退に対して。「これは、地形を知らなくても歌として読めます」・・・「厳しい・・!」と小声が上がりましたが、正論ですね。市町村合併が公の力で強引に進められ、住民の思いは大声になることもなく由緒や愛着のある名は切り捨てられるさまを、「波たたぬめぐり、ゆくたて」で表し、「山峡(かゐ)をひとすくひして」で大雑把な公の手を、これはプロの手際。そう、作者は今野寿美さん。

 もうひとつは「きれいにまとまってお上手」「出来たお歌」と賞賛が続いた後でした。


   馳走には菊ひと品もそえられて花すすき賞ず
   月の出るまで


「敢えて苦言を言わせていただきます」と切り出され、「たしかに手際よい綺麗な歌ですが、この歌は江戸時代だってあります。菊にすすきに月ですよ。古過ぎます。
せめて菊膾でなくコロッケとか」爆笑。三枝さんから「確かに道具が揃いすぎだなあ。コロッケは良くないが、なにかひとつは敢えて外してほしかった。発見がないん
だ」。

この日一番、好評だったのは、小林秀子さんのこの歌でした。


   マラソンは哲学的と風そよぎ男の熱心了解も
   する


 よく言われている上二句と目の前の多分ご主人の姿を「風そよぎ」でつかず離れず結んでいるのがいているとてもいい、と。

手厳しい言葉も出ますが、そこが歌会の面白さ。とはいえ、この頃の三枝さんは丸くなった、前はもっと恐かった、という意見もちらほらなのですよ。この日は出席33人。初参加の山田佳永子さんは、国際人、緒方貞子さんによく似た素敵な方でした。久しぶりに茨城から出席されたのは、9月号に「りとむの歌人たち」を書かれた椎名行雄さん。いつも顔を揃えてくれる若手の欠席が残念でしたが、何度かどっと沸いたり笑ったり、楽しい歌会でした。司会は和嶋勝利さんと私でした。終了後、三枝さんから「11月は北海道から樋口さんが参加してくれるからね、若い人達に声かけておいて」と言われました。
 12月はまた詠草歌会です。12月は、投票して、高得点の作者には、忘年会のときご褒美が出るんです!
12月の歌の締切日は11月21日厳守(加納さん宛て。「必ず遅く提出する方がいますので。まだまだ間に合うので地方の方や新しい方も参加してくれればうれしいです」との伝言です)なかなか出席できない方も、是非、ご出席くださいませんか?
 
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