桶谷式断乳メソッド墨汁で乳房に目玉ぐ
  るり入れしよ       寺尾登志子

 この日の歌会で僕は司会であったのだが、白状すると、この作品について理解が及ばないまま歌会に臨んでいた。しかし、歌会の場で寺尾さんがこの一首を読みあげると、会場のあちらこちらでクスクス笑う声が聞こえ
る。みんなは理解している訳である。僕は司会をしながら頭の中が真っ白になってゆく。
 この作品が理解できない理由は明白。「断乳」である。手元の辞書にも載っていない。「桶谷式断乳メソッド」とは子に乳離れをさせる方法のこと。そのメソッドによって、だいたいの年代が判るという。そんなところ
から女性たちを中心にこの作品は受けた。どんなに最新鋭の修辞を身につけても、それだけではダメだよ、と正に母親から教わったような気がした。だから歌会は大切。
 家に帰り「断乳って何のことかしってる?」と奥さんに聞いたところ、あっさり答えられてしまった。始めから聞いておけばよかった。母おそるべし。

  左手をグウとかざしてふうふうふうふ 
  ((ミ@¥@ミ))○みたいに笑う 
                高橋 晃

 突如として「りとむ」にもこのようなフェイス・マークの歌は現れた。実際の歌誌にはフェイス・マークに「ドラえもん」とルビがふってある。結婚を控えた男女の戯れを表現しているのだろうが、あまりのはしゃぎぶりに批評者であった僕は戸惑った。
 三枝氏は批評の最後に「普遍的な主題にこそ新しい表現は生きる」と興味を示しこの作品を評価した。
 それにしても「ふうふうふうふ」、作者は「夫婦ウフウフ」のつもりなんだろうが、直ぐに、ため息まじりの「ふうふう夫婦」になることを僕は知っている。


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