会 員 の 広 場

<20> 「蜀紅短歌会25周年記念大会」

2019年6月


増 田  理 恵



  蜀紅短歌会25周年記念大会             増 田  理 恵


   令和元年の梅雨入りはもどかしい。晴天続きだが、岩国蜀紅短歌会

 25周年記念行事の日は雨だった。気をもんだが、雲の空を飛んで

 三枝浩樹先生が岩国にいらした6月14日午後、奥様もご一緒である。

 蜀紅短歌会には、二宮信子会長、原田俊一副会長他、りとむ岩国の

 メンバーが全員所属している。三枝浩樹先生とはりとむのご縁もあるが、

 15年前の岩国市民短歌大会に講師として招き、奥様ともどものご縁を

 結ばせていただいている。

   三枝ご夫妻を、夕食会の広間に26名の蜀紅会員が迎えた。声々の

 あいあさつの中、三枝先生が私を見つけ、「増田さん、15年ぶりだよ」と

 言いながら手をとってくださった。相変わらずお優しい先生の雰囲気と

 お言葉に場は温かく和み、詩吟あり舞踊ありの宴は華やかに、

 「獺祭」「雁木」と地の酒もすすんだ。

 
 
 


 翌15日、記念大会が開催された。三枝先生には蜀紅会員の40首に

 歌評を頂いている。午前中の歌会では全作品に歌評をいただき、

 三枝先生らしい、分かりやすく気持ちのこもった歌評に感動した。

 

   その後、先生の選ばれた7首が発表されたが、初々しい会員の作品が

 多く、先生の新鮮な感性をみる思いだった。

 1位から7位まで順に以下のとおり

〇青空にパーしたように辛夷咲く思いっきり春を吸い込んでいる  
                                                                        市岡恵子

〇病窓を茜に染めて沈む陽をながめておりぬ 明日は胃のオペ
                                                                      藤本征子

〇しみじみと聞き手の欲しき晩春の夜わが胸にすむ夫に語りぬ
                                                  高藤礼子

〇おしろいの匂いかぐわし沈丁花蜜なる小花手毬の如き
                                         石川佳子

〇ムスカリが又点々と咲いてますあなたの顔が浮かぶ春です
                                    市岡信子

〇目加田家の雛壇飾りどの顔も今年もみんなすましてござる
                                    蔵中和恵

〇やり直しきかない人生この世にはないと思うよ夢を語ろう
                                    村重順子

   午後は、三枝浩樹先生のご講演で一般公開された。外は雨が強く降

 っているようで、聴講者の出足や足元を心配したが、51名お運びいただ

 き盛会だった。東広島市から末森知子さんもいらして、三枝先生と懐かし

 くお話された。

  演題は「成熟と喪失・・・老いはどう詠まれてきたか」と掲げられた。

 短歌をとおして自分の日々の暮らしの思いを表現する。その手応えや

 よろこびを伝えたいというお気持ちをもって柔らかな声のお話は、

 会場の空気を豊かにしていく。

 

    

 

 三枝浩樹先生を招いての時間は、令和にふさわしく心ゆたかな時と

 なった。残を惜しむ蜀紅会員だったが、来年の宮島全国短歌大会に

 先生が講師としていらっしゃると聞き、楽しみな秋を胸に、先生を見送り

 手を振った。

 
                                                            

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