会 員 の 広 場

<18> と ん ぺ ー 小 景 (中)

2019年4月


越 田  勇 俊



  と ん ぺ ー 小 景                越 田  勇 俊

  〽時はめぐり また夏が来て

  あの日と同じ 流れの岸

  瀬音ゆかしき 杜の都

  あのひとは もういない

 仙台に暮らしていると、さとう宗幸さんの「青葉城恋唄」をよく耳にする。

私にとっては新幹線の発車メロディーとしての印象がつよく、この曲を聴く

と自然と古里のことが思い出されもするのだが。ここでも唄われているよ

うに、仙台と云えば「杜の都」といったキャッチフレーズが全国的に知られ

ている。簡単に検索してみると、この異名の初出は1909(明治42)年

(このときは、「森の都」だった。「杜の都」の初出は1916(大正5)年)とい

う。ながらく人々は仙台に「杜(森)」のイメージを見出していたことが窺わ

れるが、こうして暮らしてみると「なるほどなぁ」と納得する。たしかに、

市街はあちこちに緑がある。とりわけ新緑のころともなれば、すがすがし

い程に青葉が茂ってとても快活な気分になる。思えば、東北大の校歌も

「青葉もゆるこのみちのく」と云うのだった。

〽青葉もゆる このみちのく

 いまこゝにはらからわれら

   キャンパスは本当に緑に溢れている。なにしろ青葉山である。私の通う

川内キャンパスは、そういうわけで夏がここちよい。木陰のベンチで本を

ひらき、疲れれば緑で目を休める。なんと至福のときであろう。秋冬ともな

れば、おちおち外で本などひらいていられない。風邪をひくのが関の山だ。

   仙台の桜もすっかり葉桜になった。アルバイトに向かう途中、きまって横

切る錦町公園はかくれた桜の名所であるが、あっという間に葉桜になって

しまった。しかし、仙台は満開の桜よりも葉桜の方がよく似合う。そう思う

のは、私だけだろうか。日々のせわしなさを離れて、ゆるやかに、また、

さわやかに思索を深めることができる、そんな初夏の訪れを告げる足音

が、きょう、錦町公園で聴こえた気がした。

      
         「錦町公園の葉桜。葉桜がこの街に似合うと思わせてくれる」
 

 
                                                            

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