会 員 の 広 場

<16> 菩提樹の町から(第6回)

2019年1月


寺 尾  恵 仁


    折しも日本では、出入国管理法の改正案についての議論が湧き上

  がっているとか。労働力不足を「即戦力の期限付き労働力」で補完する

  ための法案であって、いわゆる移民政策ではないと政府が強弁してい

  る。外国人の受け入れに関する法律を整備・改正する、それを移民政策

  と言うのだが。

     ひとつ聞きたい。悪名高い外国人技能実習生制度を筆頭に、国内の

  外国人に全力で人権を認めない方針の今の日本に、高度なグローバル

  でユニバーサルな人材がわざわざ期限付きで労働しに来ると本気で思っ

  てんですか。日本が未だに輝かしい経済大国で、そこで働きたい人が後

  を絶たない夢のような国だと思っている人は、今すぐ認識を改めた方が

  いい。はっきり言う。ドイツでは誰も日本の事なんて興味ないですよ。

  なんかそういう風変わりな国が極東にあるそうですな。昔結構イケてた国

  らしいけど、最近見かけないね。おやあなたは日本人ですかそうですか。

  一度旅行してみたいですね。ではさようなら。もう世界の中心で輝いた

 り、クールなジャパンだったりする妄想はよしにしましょう。沈んでいるん

 ですよ、はっきりと。

    もちろん「移民を受け入れれば仕事の取り合いになって失業率が上

 がる」というのは、およそ先進国と言われる国ならばどこの国でも直面し

 ている問題である。ドイツも例外ではない。中東からの難民受け入れに

 反発する政党が、いわゆる極右やネオナチではない「普通の人々」に支

 持され勢力を拡大している。そうした生活に根差した不安を抱える人々に

 対して「お前はレイシストのクソだ」と言うのは確かにはばかられる。

 言うけど。

  なぜ移民や難民や障碍者や性的マイノリティや、いわゆる社会で

 「弱者」「異端者」と呼ばれる人々を攻撃し排斥するのが許されないのか。

 簡単です。最も弱い存在を切り捨てていく集団は、いずれ全ての構成員

 を切り捨てる事になるからです。そしてあらゆる人間は、今この瞬間自分

 がその弱者になる可能性を持っているからです。ほんとにもう、あいつと

 かあのジジイとか、ドイツ語学校に放り込んでやりたいよ。



  (中東系のマーケットにはイスラムの戒律に
                      従って
処理した「ハラルフード」が並ぶ




                                                            

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