会 員 の 広 場

<29>「 オンライン授業つれづれ 」 

2020年12月


寺 尾  恵 仁

 
                                                                    
    「 オンライン授業つれづれ 」      寺尾  恵仁

  2020年が暮れようとしている。結局4月から一度も大学キャン

  パスで授業をすることがなかった。いまだに担当している全ての科

  目がオンライン授業である。小中高と異なり、大学では学生の数が

   多く、また授業ごとにシャッフルされるため、感染対策が難しいと

   いう事情があるそうな。さらに、大学はまがりなりにもオンライン

   授業が可能なインフラがあるため、かえって対面授業再開に時間

   がかかる。しかし明らかに労働量は増えているし、何とかならない

   かと思っている矢先の第三波である。

     現在非常勤講師として担当している授業は6大学で10コマ。うち

  半分はドイツ語だが、ほかに演劇史、文学史、映画論など。春学期

  はすべてオンデマンド授業にした。つまり、パワーポイントを動画

  化してYouTubeにアップし、学生に見てもらう。それとは別に毎回

  課題を解いて提出してもらうという形式。講義だとこれでもまあ良い

  が、語学の授業ではやはり<聞いて答える>というトレーニングが

  重要だと思うので、後期からは全ての語学の授業でzoomを導入した

  (大学によってシステムや規則が違って色々と面倒なことがあった

     のだけれど割愛)。

      日本中全ての大学教員がオンライン授業では様々な悩みを抱え

   ており、Facebookにはオンライン授業に関する大学教員の情報交換

    コミュニティなどもできた。見ている限り、どうにかオンライン

   体制が軌道に乗ってきてはいるようである。しかし肝心の学生の

   反応はどうかというと、これはもう大学によって、授業によって、

    学生によって多種多様であって、一概には言えない。オンライン

    最高という人もいるし、自宅でPCと向かい合うのにはもう耐えら

    れないという人もいる。「オンライン授業だと通学中痴漢に遭わ

   なく ていい」という衝撃的な声も耳にした。

      当たり前のことだけれど、人にはそれぞれ事情があり、思いが

  あり、背景がある。だからこそ、実際に同じ時空間を共有して、面と

  向かい合う事が大事なんだ、それが人間を一律に数値化しようと

  する力学に抵抗することなんだという信念で、これまで演劇に関

  わってきた。リスクやコストを差し引いても濃厚接触が大事なんだと、

   一応信じて色々やってはきたが、命と尊厳を守るためだと言われ

  てしまうと、さて、どうする?

   (特に載せる写真もないので江ノ島のクラゲでもご覧ください)

      

                                                                 
                                                                           
                                                              

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