「 オンライン授業つれづれ 」 寺尾 恵仁
2020年が暮れようとしている。結局4月から一度も大学キャン
パスで授業をすることがなかった。いまだに担当している全ての科
目がオンライン授業である。小中高と異なり、大学では学生の数が
多く、また授業ごとにシャッフルされるため、感染対策が難しいと
いう事情があるそうな。さらに、大学はまがりなりにもオンライン
授業が可能なインフラがあるため、かえって対面授業再開に時間
がかかる。しかし明らかに労働量は増えているし、何とかならない
かと思っている矢先の第三波である。
現在非常勤講師として担当している授業は6大学で10コマ。うち
半分はドイツ語だが、ほかに演劇史、文学史、映画論など。春学期
はすべてオンデマンド授業にした。つまり、パワーポイントを動画
化してYouTubeにアップし、学生に見てもらう。それとは別に毎回
課題を解いて提出してもらうという形式。講義だとこれでもまあ良い
が、語学の授業ではやはり<聞いて答える>というトレーニングが
重要だと思うので、後期からは全ての語学の授業でzoomを導入した
(大学によってシステムや規則が違って色々と面倒なことがあった
のだけれど割愛)。
日本中全ての大学教員がオンライン授業では様々な悩みを抱え
ており、Facebookにはオンライン授業に関する大学教員の情報交換
コミュニティなどもできた。見ている限り、どうにかオンライン
体制が軌道に乗ってきてはいるようである。しかし肝心の学生の
反応はどうかというと、これはもう大学によって、授業によって、
学生によって多種多様であって、一概には言えない。オンライン
最高という人もいるし、自宅でPCと向かい合うのにはもう耐えら
れないという人もいる。「オンライン授業だと通学中痴漢に遭わ
なく ていい」という衝撃的な声も耳にした。
当たり前のことだけれど、人にはそれぞれ事情があり、思いが
あり、背景がある。だからこそ、実際に同じ時空間を共有して、面と
向かい合う事が大事なんだ、それが人間を一律に数値化しようと
する力学に抵抗することなんだという信念で、これまで演劇に関
わってきた。リスクやコストを差し引いても濃厚接触が大事なんだと、
一応信じて色々やってはきたが、命と尊厳を守るためだと言われ
てしまうと、さて、どうする?
(特に載せる写真もないので江ノ島のクラゲでもご覧ください)
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