のある町で 生まれたら
辛い時には 坂道のぼれ
見返り坂を抜けて振り向けば
どうにかなるさ 瀬戸の青い海 (一部抜粋)
守れ権現 夜明けよ霧よ 

  山はいのちのみそぎ場所

          北原 白秋

 
会 員 の 広 場

<26>五 反 田

~歌びとにお勧めする

  パワースポット巡り~

2020年7月


西 塔  玲 子

 
   「五反田〜歌びとにお勧めするパワースポット巡り〜」 

                                   西 塔  玲 子

   今回はわたしの住んでいる五反田界隈で、歌や歌びとにゆかりのある

 場所をご紹介します。

 コロナ禍が続くなか、依然として不要不急の外出はままなりませんが、ちょ
 
 っとしたお散歩気分をお楽しみください。

 *雉子神社(きじじんじゃ)

 JR五反田駅を背にして国道1号線を高輪台方面にまっすぐ歩くこと約5分

 右側に大きな銀杏の樹の傍ら、ビルに抱かれるようにして建つ石造りの

  鳥居。そこがこの地の氏神様でもある雉子神社です。

 池波正太郎の時代小説「仕掛け人藤枝梅安」にも登場するそうですが、

  歴史は古く約600年ほど。

 以前は大鳥明神と呼ばれていたのが、江戸時代に徳川家光が鷹狩の折

 社地に一羽の白雉が飛んできたのを目出たいとされて今の名前に改名し

 たそうです。


 金運招福、必勝祈願の神として名高い、正真正銘のパワースポットですが

 菱川善夫の随筆にも登場するそうです。

  気になる方は探してみてくださいね。

  

                                                                           (雉子神社)

 *池田山公園

 ネットで「五反田 パワースポット」と検索すると1番に出てくるのは池田山

 公園でしょう。

 旧岡山藩主池田氏の下屋敷跡、池をのぞき込むように深い緑が傾斜地に

 生い茂り、周りを取り囲む。一見小さくて何でもないような公園ですが近年、

 この地が富士山からの龍脈の通り道で、風水的にとても良い場所なのだと

 脚光を浴び、知る人ぞ知るパワスポに!

 歌びとにとってはここを訪れると必ずや良い歌ができる?

 かどうかは分かりませんが、少なくとも都会の喧騒から離れ、別世界のよう
 
 な感覚を味わえることは間違いなしです。

 *ねむの木の庭(旧正田邸跡地)

 ご存じの方も多いと思いますが、上皇后美智子さまのご実家のあった場

 所を品川区が整備し、2004年に区立公園として開園しました。園内には英

 国の育種会社から美智子さまに捧げられた薔薇「プリンセスミチコ」をはじ

 め、美智子さまにゆかりの樹木や草花約50種類が植えられています。

 嬉しいことに園内の樹木には、その樹について詠まれた美智子さまの御歌

 が添えられており、散策しながら鑑賞できるようになっています。

  

                                          (ねむの木の庭)


  剪定のはさみの跡のくきやかに薔薇(そうび)ひともといのち満ち来ぬ

  

                                     (薔薇)

   白樺の小枝(さえだ)とびくぐ白き蝶ら野辺のいづくに姿ととのふ

 

                                       (白樺)

   四照花(やまぼうし)の一木(ひとき)覆(おほ)ひて白き花

                            咲き満ちしとき母逝き給ふ

 

                                       (西照花)
  *いずれも御歌集「瀬音」より

 高級住宅街として知られる池田山でも、一番奥まったところにある小さな

 公園。でもここにしばし佇んで花を眺め、樹木を見上げながら美智子さま

 の御歌を鑑賞すると、その調べの美しさ、人や自然に寄せる御心の優しさ

 が身に沁みわたっていくような気がします。

 いずれはお時間を見つけてぜひ訪ねていただきたいところです。

 *日本歌人クラブ

 今年の5月まで三枝先生が会長をなさっていた日本歌人クラブ。

 実は五反田に事務所を置いておられます。アカデミックな活動の拠点であ

 りながら、あるのは「五反田有楽街」という歓楽街のビルの中。このミスマ

 ッチが何とも趣あることですね。

 住所は知っていましたが、お守袋の中は除いてはいけないのと同じ気分で

 最近偶然知るまでは確たる場所を突き止めてはおりませんでした。五反

 田のどこかにある、というだけで有難いと感じる場所。

 

                                   (五反田有楽街)

 *JR五反田駅

 2011年3月、東日本大震災の時三枝先生がいらしたのが五反田でした。

 「りとむ」2011年5月号の「百舌と文鎮」にそのことが詳しく書かれています。

 当日歌人クラブでお仕事のため五反田にいらした先生は、目黒まで歩か

 れて食事をされたあと、いわゆる帰宅難民となって「大東京で夜を明かし

 た」そうです。


 「いま思うと、五反田から最初の予定通りに渋谷まで歩いていれば、たぶ

 ん帰宅できた。そうしなかったのは、帰宅難民の経験もそれはそれで悪く

 ない、といった気持ちがどこかにあったからだろう。」

 (「百舌と文鎮」(七十二)より)


 わたしはそのときはまだ五反田に住んでいなかったのですが、このことは

 とても印象に残りました。駅は今年の春、3年がかりの工事を終えて改装

 され大きく姿を変えましたが、未曽有の災害に遭いながら少年のような冒

 険心と、抜群の対応力を発揮された先生のお姿を、五反田駅を利用する

 たびにいつも思い出します。

 

                             (改装されたJR五反田駅)

 *国道1号線下のアンダーパス

 最初に挙げた雉子神社のすぐ近くに、国道1号線、通称桜田通りをくぐるよ
 
 うに作られた地下通路(アンダーパス)があります。

 片側4車線ずつ、分離帯も含めるとかなりの幅の道路で、交通量は相当な

 ものですが、地上に横断舗道もあるのでその真下にある通路は利用する

 人も多くはありません。昼間も薄暗く、いつも深閑としていて、都会の中に

 垣間見える異界の入り口のようです。


    さつきまでひとだったやうな顔をしてアンダーパスより猫の出でくる                       
                                   
                                   西塔玲子

 

              (4月の緊急事態宣言下、車の消えた国道1号線)

 

                                                                          (アンダーパス)

  いかがでしたか。

  五反田にはまだご紹介しきれない面白いお話があるのですが、

  それはまたいずれかの機会にいたします。

                              
 
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