守れ権現 夜明けよ霧よ 

  山はいのちのみそぎ場所

          北原 白秋
<馬名:ルーチェ号>

  ※馬年齢11歳、
    人間年齢推定44歳
※ 帆かけ舟のかたち
象の眼の笑いかけたり山桜

             与謝 蕪村
おんひらひら
  蝶もこんぴらまいりかな

         小林 一茶
船人の流し初穂の枝を見よ

      信ずるものの放胆を見よ  

                 与謝野晶子
ことひらへ
  お絵馬あぐる日         永かな
                 正岡 子規
 
会 員 の 広 場

<23>「 さぬきの国から」

~こんぴらさん~

2020年1月


氏 家  長 子

  

     「さぬきの国から(1) ~こんぴらさん~ 」   氏 家  長 子

  さぬきといえば、こんぴらさん(正式名は金(こ)刀比(とひ)羅宮(らぐう

 明治の神仏分離令まではこんぴら大権現(だいごんげん)ともよばれま

 した)。御祭神は大物主命、海の神様として古くから人々の信仰を集め

 、「一生に一度はこんぴら参り」とも言われています。

 御本宮まで785段、奥社まで1368段の長く続く石段でも有名です。

 最近は、御朱印ブーム、さぬきうどんブームも重なって、年間を通して

 多くの観光客で賑わっています。有名な歌人、俳人もこの地を訪れ、

 歌碑、句碑にその足跡が残されています。今回は、こんぴらさんの麓

 で生まれ育った私が、このHPをお借りして、まつわる歌とともにご案内

 させていただきます。どうぞよろしくお願いします。

   こんぴらさんは象(ぞう)頭山(ずざん)の中腹に位置しています。

          <象頭山>

    JR土讃線の琴平駅から高灯籠、地酒「金(きん)陵(りょう)」の蔵元、

  沿道に並ぶお土産物屋さんを見ながら石段口へと向かいます。

    <JR 琴平駅>

    <高灯籠>

    <金陵の蔵元>

    <表参道>
                  
 整備された参道の両脇には、文学作品を刻んだ灯籠が並んでいます。

   

  

  石段を上り始めてしばらくすると、日本最古の芝居小屋「金丸座(かなま

 るざ)」へ続く道があります。金丸座は町おこしとして復興され、毎年4月に

 は四国こんぴら歌舞伎大芝居が上演されています。

 三枝先生、今野先生も2015年にご覧になられました。今年は第36回を

 迎え、桜の散る頃、町全体が歌舞伎役者に酔いしれます。一年でもっとも

 美しい季節と言えるでしょう。

    <金丸座>

  ・はじめてのこんぴら歌舞伎はみつみつと「芦屋道満大内鑑」  
                                    今野 寿美

  ・寄席文字の通り札持ち身をかがめ格子木戸入るここ金丸座   
                                    加納亜津代

   参道沿いに建つ句碑、歌碑を紹介します。

  

  

 
                                   
 ・金刀比羅の宮はかしこし船ひとが流し初穂をささくるもうへ  吉井 勇
 
   吉井勇、与謝野晶子の歌に登場する「流し初穂」は、樽に米や酒、

  お賽銭などを入れて海に流し、それを拾った船人はこんぴらさんまで

  届けました。代参というひとつの祈りのかたちです。旅行など自由にで

  きなかった時代に、こんぴら参りの願いを叶える方法として広まりました。

    一方、御厩には神馬の白馬が二頭います。

  

  ・囲はれて柵を噛むよりほかなきは金(こ)刀比(とひ)羅(ら)宮(ぐう)の
                       あはれ白馬(あをうま)  今野 寿美

   いよいよ御本宮前の心臓破りの石段です。この石段を上ると神様の

  ふところそう自分に言い聞かせて一気に上りきります。

  

   息を切らしながら望む讃岐平野は格別です。天気の良い日は正面に

  讃岐富士、その左奥に瀬戸大橋、岡山県まで見えます。

   <御本宮からの眺め>

 ・筑紫より海わたりきて琴平の神のみ山に汗ふきにけり   斎藤 茂吉

    <御本宮>

   石段を上る苦しさ、美しい景色が飛び込んできた感嘆など、境内では

 聞き慣れない方言や外国語が交錯します。この場所のこの賑わいが私は

 大好きです。
 
   御本宮からさらに奥社(厳(いづ)魂(たま)神社)へと進みます。参道は

 石段というより山道が続き、パワースポットとして注目されているところです

 しかし一昨年、西日本豪雨の後は土砂崩れにより道が閉鎖されました。

 通行止めの解除に何ヶ月もかかり、やっと開通したと思うとまた台風や大

 雨で閉鎖される、その繰り返しです。そのような険しい山道で北原白秋の

 歌碑に出合います。書は安東聖空、崖っぷちがよく似合う歌碑です。

  


  日の当たらない鬱蒼とした断崖に、ずっしりと置かれています。この前に

 立つと、命が濯がれ、森の精気に満たされていきます。これから難所急所

 に向かう私たちに勇気を与えてくれるようです。誰もが立ち止まっています。

  さて、無事お参りを済ませて下山すると、自然と足はうどん屋さんへ。

 このあたりはコンビニよりうどん屋さんの方がはるかに多いです。

 そう、こんぴら参りとさぬきうどんはセットメニューなのです。

   『牧神の午後』の流るる小店にてましろき釜揚げうどんをすする 
                                    笹谷 潤子

  次回は「瀬戸大橋と丸亀」についてです。

 

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