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会 員 の 広 場
<23>「 さぬきの国から」
~こんぴらさん~
2020年1月氏 家 長 子
「さぬきの国から(1) ~こんぴらさん~ 」 氏 家 長 子
さぬきといえば、こんぴらさん(正式名は金(こ)刀比(とひ)羅宮(らぐう
明治の神仏分離令まではこんぴら大権現(だいごんげん)ともよばれま
した)。御祭神は大物主命、海の神様として古くから人々の信仰を集め
、「一生に一度はこんぴら参り」とも言われています。
御本宮まで785段、奥社まで1368段の長く続く石段でも有名です。
最近は、御朱印ブーム、さぬきうどんブームも重なって、年間を通して
多くの観光客で賑わっています。有名な歌人、俳人もこの地を訪れ、
歌碑、句碑にその足跡が残されています。今回は、こんぴらさんの麓
で生まれ育った私が、このHPをお借りして、まつわる歌とともにご案内
させていただきます。どうぞよろしくお願いします。
こんぴらさんは象(ぞう)頭山(ずざん)の中腹に位置しています。
<象頭山>
JR土讃線の琴平駅から高灯籠、地酒「金(きん)陵(りょう)」の蔵元、
沿道に並ぶお土産物屋さんを見ながら石段口へと向かいます。
<JR 琴平駅>
<高灯籠>
<金陵の蔵元>
<表参道>
整備された参道の両脇には、文学作品を刻んだ灯籠が並んでいます。
石段を上り始めてしばらくすると、日本最古の芝居小屋「金丸座(かなま
るざ)」へ続く道があります。金丸座は町おこしとして復興され、毎年4月に
は四国こんぴら歌舞伎大芝居が上演されています。
三枝先生、今野先生も2015年にご覧になられました。今年は第36回を
迎え、桜の散る頃、町全体が歌舞伎役者に酔いしれます。一年でもっとも
美しい季節と言えるでしょう。
<金丸座>
・はじめてのこんぴら歌舞伎はみつみつと「芦屋道満大内鑑」
今野 寿美
・寄席文字の通り札持ち身をかがめ格子木戸入るここ金丸座
加納亜津代
参道沿いに建つ句碑、歌碑を紹介します。
・金刀比羅の宮はかしこし船ひとが流し初穂をささくるもうへ 吉井 勇
吉井勇、与謝野晶子の歌に登場する「流し初穂」は、樽に米や酒、
お賽銭などを入れて海に流し、それを拾った船人はこんぴらさんまで
届けました。代参というひとつの祈りのかたちです。旅行など自由にで
きなかった時代に、こんぴら参りの願いを叶える方法として広まりました。
一方、御厩には神馬の白馬が二頭います。
・囲はれて柵を噛むよりほかなきは金(こ)刀比(とひ)羅(ら)宮(ぐう)の
あはれ白馬(あをうま) 今野 寿美
いよいよ御本宮前の心臓破りの石段です。この石段を上ると神様の
ふところそう自分に言い聞かせて一気に上りきります。
息を切らしながら望む讃岐平野は格別です。天気の良い日は正面に
讃岐富士、その左奥に瀬戸大橋、岡山県まで見えます。
<御本宮からの眺め>
・筑紫より海わたりきて琴平の神のみ山に汗ふきにけり 斎藤 茂吉
<御本宮>
石段を上る苦しさ、美しい景色が飛び込んできた感嘆など、境内では
聞き慣れない方言や外国語が交錯します。この場所のこの賑わいが私は
大好きです。
御本宮からさらに奥社(厳(いづ)魂(たま)神社)へと進みます。参道は
石段というより山道が続き、パワースポットとして注目されているところです
しかし一昨年、西日本豪雨の後は土砂崩れにより道が閉鎖されました。
通行止めの解除に何ヶ月もかかり、やっと開通したと思うとまた台風や大
雨で閉鎖される、その繰り返しです。そのような険しい山道で北原白秋の
歌碑に出合います。書は安東聖空、崖っぷちがよく似合う歌碑です。
日の当たらない鬱蒼とした断崖に、ずっしりと置かれています。この前に
立つと、命が濯がれ、森の精気に満たされていきます。これから難所急所
に向かう私たちに勇気を与えてくれるようです。誰もが立ち止まっています。
さて、無事お参りを済ませて下山すると、自然と足はうどん屋さんへ。
このあたりはコンビニよりうどん屋さんの方がはるかに多いです。
そう、こんぴら参りとさぬきうどんはセットメニューなのです。
『牧神の午後』の流るる小店にてましろき釜揚げうどんをすする
笹谷 潤子
次回は「瀬戸大橋と丸亀」についてです。