今 月 の 十 首 詠 第 13 回 (2023年08月) 平 塚 宗 臣 |
密 厳 院 平塚 宗臣 空海が植ゑしと伝ふ菩提樹の末葉 (すゑば)は今も時見つめをり 伝説の菩提樹の名が村名となりて山口 菩提樹(ぼだいぎ)村は 淡黄色の小花つければ村びとは芳香と 蜂の羽音を愛づる 翁樹(をうぎ)神社に老菩提樹は生えてをり 御堂はむかし近くにありき 密教の寺ぞ佛国密厳院れんげうの黄花 真つ盛りなり 高野山の寺名賜りし密厳院開基は平安 後期であらう 本堂に瑠璃殿の額かかげらる薬師は 与ふるりのくすりを 「弘長二年」「阿弥種子」刻みし板碑あり 文字はかすれて上部は欠けて 狭山丘陵の北の傾りに墓ならぶ禅定門、 居士、糟谷、粕谷と 谷(やつ)に残る二枚の田んぼ山桜 原風景ぞ菩提樹村の 「歌評」今野寿美 ライフワークの郷土史を詳細にふまえた 探訪記。地元所沢で継続・進行中。 風格ある菩提樹村、翁樹神社、瑠璃殿 いずれの名も清かにゆかしい。 歌人の冴えた音感による掬い取りと詠み 入れの成果あってのこと。 |