今 月 の 十 首 詠 第 15 回 (2023年12月) 渡 辺 吉子 |
心 の 入 り 口 渡辺 吉子 治すより治る自分になりたいと「す」と 「る」のあわい ゆきつもどりつ スギ花粉ピーク過ぎればヒノキ飛ぶ 諍えぬもの自然の力 息つぎを飛ばす自分に気がつきぬ 逃れる心が心をあおる 時だけは無かったように流れゆく 広島サッミト終りをつげる 忘れものしてはいないか五月尽 心のメモを確かめてみる 変わることが心が素直に変われない わかっていても わかっているのに 手洗いもうがいマスクもそのままに 当分当分 ずっと当分 コロナ禍の三年間は緊張の どまん中に心を置いた 幼子がバイバイするごと水張田に 敷きつめられた早苗がそよぐ 目の前にあるもの見えぬことのあり 心の入り口 手さぐりてゆく 「歌評」今野寿美 心の持ちようとはいうけれど・・。という嘆息 まじりの語りそれぞれにさ さやかな現実味。語尾の違いは根本の違い になるし、自然には杭えない。 杭わずとも早苗の緑に救われる。 そこに至る十首と読んだ。 |