今 月 の 十 首 詠 第 6 回 (2022年12月) 木 下 敦 子 |
北 風 よ り も 木 下 敦 子 太陽は北風よりも強かった プーチン変える秘策を探す 赤字抱き戦く母の映像に 戦時下のわが母重なりぬ わが肩をしかと抱きしめ涙せし 友の温もり消ゆることなし コロナ下に夫を亡くしし友の肩 抱くことならず目で慰むる これなんだ無償の愛って 曾孫抱き 寝顔見ながらひとりの思い 一粒の芥子の実ほどの我なれど 神は包まぬ無償の愛で リュウダウに水の痕跡ありという 羊水もまた星のしずくか これぞわが作品なりと鏡みる シミ、シワ多き顔でありとも 梅雨寒にココアを飲めば湯気のなか 母の笑顔がまあ~るく浮かぶ カマキリの五ミリばかりの子どもにも ギョロ目と鎌あり すべて良きかな 「歌評」今野寿美 危うい地球の現状に戦きながら精一杯心 で応ずる。歌につづればささやか でも消えるはずのない痕跡。新たに生ま れた命を愛おしむのも生命をその発端 から包む水を尊ぶのも寛容な心から。 良きかな。 |