巻 頭 エ ッ セ イ
<60> 「 奏 で る 短 歌 」
2024 年 02月和 嶋 勝 利
奏 で る 短 歌
和 嶋 勝 利
音楽こそ慰藉といふひとの音楽をしばらく
聴きてわれは立ちたり
真中朋久『cineres』
音楽家に限らず、「慰藉」に対して、このような矜持に陥り
易い人は多い。
漠然と平和を訴えるぐらいなら害はないが、固定観念にと
らわ れた、思い込みの激しいアーティストには辟易すること
もある。
作品の場面は純粋に音楽を楽しむのではなく、MC等で
自分の主張を押し付けるような退屈なライブだったのだ
ろう。作者は席を立ってしまった。
作品は、このアーティストに対する作者の感情ないし嫌悪を、
場面の切り取り方や作者の行動で表現している。その上で、
作者の心理を簡明に伝える作品のもの言いに惹かれる。
被災者を励ます目的であっても震災直後の被災者とって音楽は
〈不謹慎〉という声は確かにあって、令和6年能登半島地震
の際に、東日本大震災での反省を述べたアーティストがいた。
この作品 からは、そんなことも考えさせられる。
』