巻 頭 エ ッ セ イ

<55> 「 仕 送 り 」
 

2023 年 05月


里 見  佳 保 


      仕 送 り 
                                             里見 佳保

      給料日をすぎると、まずやることがある。それは仕送り。

   遠く離れた大学生の息子へあてて応援の思いを届ける月例

   行事だ。仕送りのお金は毎月同じ額を親口座から息子口座へ。

     もうひとつは仕送り箱。とある月のわが家の仕送り箱の中身を

   綴ってみたい。

     その1米(「これさえあれば、何とかなる!」)、

     その2マスク(コロナ禍に大学生になったゆえ毎回欠かすこと

        のない定番仕送り。「手洗いもしっかりしなさいね。」)

     その3ふるさと特産品(地元にしか売ってないようなお菓子や

         調味料。「なつかしの味でほっとしてね。」)

     その4自分では買わないけど、もらえたらちょっとうれしい

        もの (かりんとうやカステラなどのおやつ。コーヒーの

        ドリップパックや紅茶のパック、缶詰やレトルト。果物も

        入れよう。「よろこんでくれたら、うれしいよ。」)

     その5わが家独自グッズ(博物館、美術館が好きな息子の

        ために時々は地元紙の文化欄の切り抜き記事なども入

        れる。「帰ってきた時には地元探検もいいものだよ。」)

     その6クッション材(品物の間にタオルやふきん、ティッシュ

         なども入れてすきまを埋める。「できるだけ、いろんなもの

        を送りたい。」)

      というわけであれこれ自分たちのための買い物以上に考え

    て選ぶ。「届いたよ。ありがとう!」という連絡が来るとほっと

    一安心。「また今月もがんばってね!」となる。

     私も学生時代、母から仕送り箱が届いていた。ぎっしりの品物

   の中には「なぜこれを?」という品がひとつ、ふたつ入っており

   いつも謎チョイスだと思っていた。母は母なりに考えて選び、

   詰め、私からの「届いたよ。」の報告を喜んでいたのだろう。

   それが今、わかりすぎるくらいわかるようになった。

   私の段ボールも息子からは謎チョイスと思われているのかも

   しれないなあ。

   仕送り箱。開けてびっくり、わくわく、うれしい。

   ちょっぴりほろり。

   時代と場所は変われど、親心変わらず。である。

        それぞれを子らへ仕送りアクセルを踏む足軽しわが給料日

        大城和子『風の位置』



  

 



  

   
 

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