巻 頭 エ ッ セ イ

<33>  メ ジ ロ  と  遊 ぶ  


2021 年 2月


原 田  俊 一 

 

      メ ジ ロ と 遊 ぶ       原 田 俊 一


    去年の暮より、明けて睦月・如月の寒中のひと時をメジロ

  と遊んでいる。

   屋敷の狭庭に富有柿が実り、その熟柿を雀等が霜月の間

  に食べ尽くしてくれた。柿の他に温州ミカンがある。裏年の

  せいで数が少なく、それでも百ヶ程が実り半分ほどを食べた

  師走半ばに、美味しい愛媛のミカンが贈られてきた。

  そこで食べ残りの我が家のミカンを輪切りにして梅ケ枝に咲

  かせ、メジロを招くことにした。

      



   このささやかな営為に対し、待ってたとばかり、番の

   メジロが訪れ、輪切りミカンを啄んでくれる。

     メジロはスズメ目メジロ科に類されるがスズメよりやや

   小さく、黄緑色の羽毛をもち、目の周囲には可愛い白色

   のアイリングがある。室町時代より、メジロと称され可愛

   がられていたらしい。

   果汁や花蜜を好み、警戒心が緩く近くに寄っても逃げない。

   輪切りミカンを梅ヶ枝に咲かせる日課をつづけ、寒中の

   ひと時をメジロ観察に費やすことになった。

   啄むことに飽きたメジロ夫婦は仲良くカナメ垣に止まり、

   羽繕いをしたり、メジロ押しをしたりして心を和ませて

   くれる。

   メジロがミカンを啄む風景をスマートフォンの動画に収め、

   友人に配信することにした。メジロ動画は、ささやかながら

   巣ごもり暮しの友人を癒すことになり、好評であつた。

    梅の木の根方に「雪割一華」が地味ながら、ほころび始

  めた。りとむ会員の皆さまに「ミカンを啄むメジロと雪割一華

  の白紫の花」の写真を添えて、八十八歳(やそはち)の浅い

  春の便りといたします。


  梅ヶ枝に咲かす輪切りの小蜜柑をメジロ啄む明けのしじまに

  春浅き風に誘われ花ひらき雪割一華は
              白(びゃく)紫(し)にゆらぐ


                      令和3年立春




 
 

   

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