てんきりん <45> 『 山 と 水 と 』 2024年 01 月 |
春ここに生るる朝の日をうけて 山河(さんか)草木(さうもく)みな光あり 佐佐木信綱 身近な新年の歌として思い出すのは石川啄木の 「何となく、/今年はよい事あるごとし。/元日の 朝、晴れて風無し。」だろう。暮らしの願いを含 んだ啄木自身の息遣いを感じさせる点が魅力だが、 掲出歌は〈新しい春、山も河も草も木も、万象す べてが新しい光を受けて躍いている〉 と正面から新年を言祝いだ晴の歌。風景が光り輝 くのは折々のことだが、新年の光に含まれた姿は やはり格別、スケールの大きい賀歌。暮らしの歌 とは、別のこうした言祝ぎの歌を信綱は大切にし た。『山と水と』所収。 (三枝昂之) |