てんきりん <43> 『 遠音よし遠見よし 』 2023年 06 月 |
言ふならば汗牛充棟の啄木論 読めば読むほど君遠ざかる 伊藤一彦 歌人論の連載を。「歌壇」の奥田洋子編集長から打診を 受けたのは平成十七年の多分夏。啄木を選んだが「国際啄 木学会」もあり、先行文献がまさに汗牛充棟。ため息が出 るが信頼できる啄木研究者から「三冊でいいです」。先行 研究が多いから新しい研究は細部へ細部へとなり、文字通 り「君遠ざかる」。牧水研究を重ねながらなお見えない牧 水へ向かって歩む伊藤ならではの実感と自戒でもあるだろ う。「四月十三日、啄木忌」と詞書がある。これは詩歌と 詩歌研究の永遠の溝。遠回りして「君」の核に触れる研究 もきっとあるはず。『遠音よし遠見よし』から。(三枝) |