てんきりん

<41> 『 聖 書 』



2023年  02 月


三 枝  昻 之


    この仕事使命にあらず天よりの指名と思はむ

                       助けはくるはず

                  春日いづみ

      聖書協会共同訳『聖書』刊行は2018年、帯に

    「ゼロ0からの翻訳」とある。春日さんは詩編や箴言

     などの和訳を担当。歌人としての評価からだろうが、

     大いなる緊張が「天よりの指名」に表れ、結句には

     信仰を核とした者の敬虔さがある。詩編1は「幸い

     な者/悪しき者の(はかりごと)にあゆ歩まず」と始まる。

     チームを組んでの和訳だがその苦心の中での再発見が

     「白飯に卵を落としつつ思ふ にほんのことばの

      やはらかきこと」だろう。歌集『地球見』には自身

     も関わった岩波映画の閉館への格別の感慨も歌われ
  
     柔らかな表現とハードな主題、ずっしりと読み応え

   がある。

                                (三枝昂之)

  

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