てんきりん <36> 三枝 昻之 2022 年 4 月 |
勝一郎小公園の碑を思う「人生 邂逅し 開眼し 瞑目す」 西勝 洋一 啄木一家が住んだ函館青柳町に亀井勝一郎の文学碑が ある。人と出会い、世界を広げて生き、そして静か去 る。掲出歌はこの言葉に深く心を寄せている。「短歌 人」今年三月号七首から。西勝は一月三十一日に世を去 っているから、最後の詠草の可能性がある。なぜ亀井な のか、なぜこの言葉なのか。同じ函館で生まれ亀井に 寄り添うことによって故郷と一つになろうしたのでは ないか。 一報は西勝を尊敬していた札幌の樋口智子から届いた。 パフォーマンスが嫌いな静かで芯の通った歌人だった。 反措定叢書に『コクトーの声』があり、新婚時代のわが 家にも来てくれた大切な友人だった。切ない。 (三枝昂之) |