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てんきりん
<29> 俵 万 智
2021 年 2 月三 枝 昻 之
どこんちのものかわからぬタッパーが
いくつもいくつもある台所 俵 万智
俵は東日本大震災のあと子育ての場を石垣島へ移し、島
の暮らしをさまざまに詠ってきたが、掲出歌は息子の進学
のために島を離れることになった最後の日々の一連から。
タッパーの容器が台所にいくつもあり、どの家のものかわ
からない。垣根も敷居もないに等しい島の濃密な暮らしが
そこから見えてくる。「どこんちの」という軽さが行き来
自由なその解放感を生かしてもいる。「次に来るときは旅
人 サトウキビ積み過ぎている車追い越す」は法令よりも
暮らしの要。「積み過ぎている」がそんな島の大らかさを
生かして楽しい。『未来のサイズ』から (三枝昻之)