てんきりん

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2017 年 8 


今野 寿美


君は去りぬ残るはわれと小さき世の/月も月かは花も花かは                                       
                                        萩原朔太郎「ソライロノハナ」

 一月号本欄で紹介した朔太郎の手書き歌集を読み進めると「白百合の君


別れし夜よめる」と添えた二首が登場する。しろゆり? そう、まさし


山川登美子を悼む二首なのだ。「み別れに奉る夜のましろ百合/君を一


の姉とも知れな」、そして掲出の一首が並んでいる。

  十七歳の朔太郎の三首が初めて載った明治三十六年七月号の「明星」

開くと、そこには夫と死別した登美子が挽歌「夢うつつ」十首を寄せ てい

るのであった。誌面の短歌作品から受ける心震える感銘を、朔太郎はここ

に初めて体験したに違いない。それを知ってわたしの心も震えた。


 下の句は登美子の「をみなにて又も来む世ぞ生れまし花もなつかし月も

なつかし」をふまえる。あなたのいない世であってみれば、月も花もかつ

てのままの月や花であるはずがない――。  ぜひとも記憶に残したい。


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