会 員 の 広 場

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2017年8月


寺 尾  恵 仁


 
第2回 春の菩提樹の町から 


 ライプツィヒ留学は二度目になる。前回は2007年から一年弱、初めての

ドイツ留学であり、右も左も分からなかった。今回は妻と娘(と猫)を連れ

だが、前回はたった一人。日本語に飢えて、『りとむ』が届くのが楽し

みだた。端から端まで舐めるように読んでいたのはこの時期だけ

(すみませ ん)。屈託して「全部ア段音の歌」とか作ったっけ。ウ段まで

って挫折したけれども。
 

  それにしてもメディア技術の進歩を強く感じる。1997年、父と兄が一年

海外 に暮らしていた時には、まだファックスが活躍していた。2007年

のド ツ留学では、国際電話専用のテレフォンカードを買っていた

(1500円で25分くらい)。今 やインターネット経由で、日本と無料通話

ができるし、 情報はほぼリアルタイムで手に入る。むしろ日本語情報

に埋もれ過ぎないように気を付けないといけな いほどである。
 

  そんな訳で、日記代わりという短歌の基本的な役割は変わっていない。

しかし語句を定型に揃えていると、良かれ悪しかれ自分は日本語話者

なのだなと いう当たり前の事が強く感じられる。自分とは言葉であって、

外国語を学ぶという事は、新しい自分を一から作り上げていくようなもの

だと思う。しんどい。




                         (春のライプツィヒ)


  第3回 夏の菩提樹の町から 
  
   三歳の娘は平日保育園に通っているが、休日ともなれば無尽蔵のエ

ルギーで家中を駆け回る。始終それに付き合ってもいられないので、

親子で地元の 子供向け劇場によく足を運ぶ。子供向け劇場と言っても

バカに できない。ライプツィヒの誇るTheater der jungen Welt(直訳すれ

ば「若い世界の劇場」)は 1946年創設、ドイツで最も古いプロの青少年

演劇専門 劇場である(大人向けの演目もある)。専属の劇団が日替わ

りで多くの作品を上演しており、特に人 形や様々な道具を使った子供

向け演劇のクオ リティがなかなかのものだ。ちなみに子供向け演劇に

は細かく対象年齢が明記されている。どうも五歳を越える と語りの要素

が大きくなるようで、 見に行く時にはその辺の事も考慮する。ちなみに

先日ベルリンでも一本子供向け演劇を見たが、すっかり目の肥えた娘に

は今一つ不評であっ た。

    しかし演劇という表現芸術が観客に及ぼす強い作用は面白い。上演

を見た後は、娘が興奮しているのがよく分かる。興が乗ると自分で再演

を始める。「言 語コミュニケーション教育のための演劇」というテーゼの

是非はともかく、やっぱり劇場通いは愉快なものである。



  
                         (夏のライプツィヒ)


 
       

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