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< 広 島 ・岩 国  歌 会 >


2017 年 6


増 田 理 恵


2017.6.2 広島・岩国 歌会 

         岩国福祉会館 三階 会議室

 広島・岩国の歌会は、毎月第1金曜日に岩国駅から徒歩10分の福

祉会館の一室で開かれます。午後の3時間半を、いつものメンバー

で短歌の話に花を咲かせます。りとむ誌が届くとその月は「今月の

十首詠」をとりあげ、それぞれの意見を出し合います。次の月は、

そのリとむ誌の中から、各自の気付きを発表します。多くは良いと

思った短歌がとりあげられますが、「りとむNo150」からは、

仲間の藤本寛さん征子さんご夫妻のそれぞれの文章もうれしく話題

になりました。短歌作品はひとり2首出詠、歌会のある週の初めに

詠草が届くので予習が出来ますし、作品に関係のある資料などの用

意もできます。

 それでは、6月2日の歌会に出された歌を紹介しましよう。それぞ

れについての評や話し合いの様子を付けて、会員の紹介もかねます

ひとり1首ずつ、岩国会員の倉重美栄子さんは欠詠でしたので、広

島会員2名、岩国会員9名の作品、計11首です。歌会の様子とと

もにお楽しみください。

    

〇丘の上の師の奥つ城にぬかずけば優しき御声の聞こえ来るよう
                                              白川朝子

(評)「奥つ城」は漢字だと奥津城、この津は格助詞だ、などと話

し「ぬかずけば」はおおげさ、「御」も不要ではとの意見が出され

た。どこかに季節感も欲しいとされた。

〇歩くこと少なく山の道の駅独活のみどりのすずしきところ
                                              末森知子

(評)「歩くこと少なく」の解釈ができないが、山にあるとはいえ

道の駅には自動車で行くので歩かないということかもと。むしろ三

句以降の描写にそれは不要ではとの意見。

〇太巻きを半分コして老妻とともに見上げるきらら子(ね)の星
                                                                          原田俊一

(評)「老妻」とは何たる言いぐさ、わが妻で十分ではないかとの

意見に、寛さんから次の様なプランが出された。新妻、若妻、人妻 
  
そして分かったことは、どの妻にするかでこの歌の印象が決まる

ということ。そうか、「老妻」だから「半分コ」「きらら」として

古ぼけすぎないようにしてあるのだの発言に、またも老妻たち(ご

めんなさーい)は、だまってない様子。

〇鳴き止まぬは何故だろう犬さすり牛乳のませまた摩りやる
                                              幸田堯子

(評)もう一首に「目も耳も弱り夜鳴きをする犬よ」とあるので、

こんな具合の愛犬、様子も心配も伝わってくるとしみじみ。

〇叩いても知らんぷりぷり蒟蒻を今日も食みおりノン・カロリーを
                                              津村スマ子

(評)「知らんぷりぷり」は蒟蒻の感触を思わせて上手い。三句と

結句が両方四句にかかる作りになっている。結句に料理名を入れる

と初句の調理手順と会う。

〇真っ白なハンカチのごとき孫の嫁 えにしは風にゆだねておこう
                                              二宮信子

(評)この比喩は「孫の嫁」だから言えた、息子の嫁だとこうはい

かないとの意見。「えにし」は漢字でもいい。

〇私がわたくしらしくあった日を笑顔で迎える庭のパンジー
                                              浜田美恵子

(評)「あった日を」が過去の出来事のようにとれると問題になっ

たが、「あった日に」か「あった日は」とすることで解決。

〇本当にいいのですか わが空を欲しいままに米機の轟音
                                              浜村英子

(評)二句四句の字足らずが気になることと「米機」は具体的にい

いたいということで、プランとして「本当にいいのでしょうか わ

が空を思いのままに轟音ファントム」と整えた。窓の外にわが空を

見る岩国の会員たち。

〇豆のさや手で確かめつつ収穫す濃い紫のツタンカーメン
                                              藤本征子

(評)さっそく寛さんにより、パソコン画面でツタンカーメンの豆

が紹介される。下の句を「ツタンカーメン濃い紫の」とするとツタ

ンカーメンが一首にとけ込む

     

〇この頃は腹冷えふせぐ腹巻の不要となりて妻笑いおる
                                              藤本寛

(評)「この頃は」が気候を思わせるが、いやいや腹の脂肪が腹巻

の代わりになっているのではとの発言、そんなことないよね、しか

し、どうもそうらしい。

〇恋ってね切なさがなきゃダメなのよつま先立ちのひめじょおん揺れ
                                              増田理恵

(評)「つま先立ち」と上の句が危うさを思わせて合っている。ど

うも寛さんは夫(つま)か妻(つま)かと心配したそうな。

 多くの言葉に浸る歌会を終えて、広島方面行きの電車で帰ります

この日は、浴衣を着た乙女や、赤いカープファンでいっぱいでした

。広島の浴衣着はじめのお祭り「とうかさん」と、千葉ロッテと戦

うカープを応援するためにマツダスタジアムに行く人たちです。広

島駅を過ぎれば、球場がそびえます。目に真っ赤、頭に言葉が渦を

巻く、そんな帰り道でした。


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